何でもあり…の様相を呈したクラシック最終戦。先週、1000万円馬券が飛び出した秋華賞の余韻が残る淀のターフに“マイホーム馬券”を夢を見たファンもさぞかし多かったことだろう。ところが、終わってみれば1番人気オウケンブルースリの完勝。主役が完ぺきなるヒーローを演じたことで、払戻金は“一家・香港旅行”レベルで落ち着いた(?)。
レースは予想外の流れとなった。アグネススターチの一人旅と誰もが思っていた矢先、2角を回るあたりでノットアローンが“暴走”。前半5Fのレースラップ、12秒9→12秒2→11秒0→11秒7→11秒0が示す通り、出入りの激しい展開になった。
他馬が乱ペースに苦しむなか、オウケンは中団でピタリと折り合った。3角すぎで早くも追い出しにかかると、4角ではすでに5番手の絶好のポジション。最後はフローテ−ションの強襲に遭ったものの、持ち前の強じんな末脚を発揮し、結果的には1馬身1/4差をつける横綱相撲だった。
JRAクラシック初勝利となった内田騎手は「京都の直線は平坦なので、のんびり構えていると前の馬にやられてしまう。後方一気は難しいと考えていたので、早め早めに動いた。強いオウケンを見せれたと思う」と、してやったりの表情。後方一気で敗れた前走・神戸新聞杯とは一転して積極的な仕掛け。勝てば官軍とはいえ、鞍上の学習能力の高さは特筆されていい。
「前走は次のレースを見越し、折り合いに専念して最後の直線だけの競馬。京都の特殊性は何回か騎乗して分かっていたし、長くいい脚を使える馬だと思っていたからね」
一方、管理する音無調教師は「今日は少し違った乗り方になったが、ウチパクさんが研究してくれてのもの。これでまた違った持ち味が出た」と最大級の賛辞を贈るとともに、「直線の長い東京コースが合いそうなので、無事に行けば次はジャパンC」と明言した。
ただし、喜んでばかりもいられない。ディープスカイ、ブラックシェルなどの一線級は軒並み不在。「菊花特別」と揶揄されたほどの低レベルなメンバー構成だっただけに、いわばこの勝利は鬼の居ぬ間に得たものと位置付けるのが妥当だろう。現実に今日は前出のペースを考えればレコードに近い時計が出てもおかしくはなかった。それでいて、勝ち時計は近5年で一番遅かった。
順調なら世代の一等星ディープスカイとの再戦は、11月30日に行われるジャパンC(GI、東京芝2400メートル)。“アチョー”の評価はそこまでおあずけ…といったところか。