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はなわだけじゃない 芸人作の“泣ける家族歌”

“泣ける歌”として、SNSを中心に今なお拡散中なのは、はなわの『お義父さん』。

 これは、父の顔を知らずに育った愛妻が、立派な母となったことを伝えるノンフィクションソングだ。単独ライブで披露した動画がYouTubeでアップされると、およそ20日間で100万回再生を突破。今年5月24日にCDがリリースされ、大みそかの“紅白”出場が期待される。

 はなわのように、芸人が家族にまつわる経験談を歌詞にしてヒットした例は、いくつかある。ダウンタウン・松本人志が作詞した『チキンライス』も、そうだ。作曲は、槇原敬之が担っている。きっかけは、ダウンタウンが司会をしていた音楽番組『HEY!HEY!HEY!MUSIC CHAMP』(フジテレビ系)に、槇原がゲスト出演した際、浜田雅功が依頼して、実現した。

 クリスマスソングだが、さもありなんの恋愛ソングではない。赤貧だった松本が、たまの外食で高いものを頼むと、2度と連れて来てもらえないような気がして、親に気を遣って、安いチキンライスを頼んだという詞だ。さらに、貧乏も「最後は笑いに変えるから」として、「(高価な)七面鳥よりチキンライスがいい」と締めくくる。歌唱は槇原と浜田。SMAPのトリプルミリオンヒットとなった『世界に一つだけの花』を提供した槇原は、稀代のヒットメーカーなのだ。

 いっぽう、吉本新喜劇座長で、幅広いバラエティ番組に引っ張りだこの小籔千豊は、亡き母に向けた『プリン』を手がけている。名義は“こやぶかずとよ”と、ひらがな表記だ。

 小籔は、吉本新喜劇の歴代最年少座長に就任する前に、母を悪性リンパ腫で亡くしている。入院した際は「余命2週間」を告げられたが、およそ1年以上も闘病した。その母が大好きだったものが、プリン。息を引き取る4時間ほど前に、「プリン食べたいわ」とつぶやいたため、買いに出かけたが、病室に戻ったころの母は食べられる状態ではなく、最後のプリンを味わうことなく逝ったという詞だ。

 親孝行と無縁で生きてきた小籔だったが、亡くして初めて気づいた母のありがたみ。座長になり、全国区タレントとなった姿を見せてあげられなかったことは、悔いることだ。

 笑いを生業とする芸人だからこそ、にじみ出る寂寥感はリアル。だからこそ、芸人発の泣ける歌は、胸に響くのだ。

 今、そのリアルの伸びしろを試されているのが、はなわ。今年下半期、音楽業界に風穴を開けることはできるか。

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