「北京五輪が終わった後、大きな覚せい剤取引があるとの情報が入っていた。さすがにオリンピックは国を挙げての行事。その間はマフィアも警察も鳴りを潜めていたが、五輪開催期間中、日本の暴力団関係者が中国へ渡り、早く荷を降ろすよう催促していたといいます」
こう話すのは麻薬取締部のOBだ。
2、3年前、国内の覚せい剤が払底した時期があった。理由は北朝鮮ルートのブツが枯渇したからである。日朝関係の悪化で万景峰(マンギョンボン)号が日本の港へ入港できなくなったため、一気にブツがなくなってしまったのだ。
「そのため、シャブの相場が物凄く上がった。ヤクザはブツを保管する倉庫を持ち、国内の需給状況を見て商品を市場へ出すが、ブツそのものが底をついてしまってはどうしようもなく、シャブを製造していた時期もあった。場所は那須の別荘。ところが、物凄い悪臭が出る。やりすぎると足がつく。今ではほとんど国内では密造していないはずだ」(事情通)
その点、中国は国土が広大無辺。車で3時間も走れば、人影も見られない辺鄙(へんぴ)な場所にたどり着く。
「北朝鮮からの覚せい剤を横流しするほか、国内でブツを密造して日本へ輸出しているんです。中国はヨーロッパで製造された合成麻薬MDMAのダミーの密造も盛んでしてね。ホンモノそっくりのダミーを作っては市場に出す。そのため、MDMAの種類は膨大な数に上るんです」(前出のOB)
今回押収された覚せい剤が北朝鮮産なのか、中国国内で密造されたのか、はたまた第三国のものなのかは分からない。しかし、ユニバーサル号に覚せい剤が積み込まれたのは中国の防城だったという。
「中国マフィアが関与しており、乗組員も現地で調達され、通常の給料の10倍報酬を支払う約束で船に乗り込んだ」(捜査関係者)。密輸された覚せい剤は暴力団がいったん、倉庫に保管。受給状況を見て、市場に出す手はずになっていたと見られる。
このところ、芸能人など有名人の覚せい剤事件が相次いでいる。悪魔の囁きに心を売ってしまう者が後を絶たないのも、ブツが潤沢にあるからにほかならないのだ。