確固たる軸馬がいない、といったら「お前の目は節穴か」と、四方八方から非難の集中砲火を浴びせられそうだ。
偉大なシンボリクリスエス(天皇賞・秋2回、有馬記念)の半弟ピサノデイラニがいるではないか。未勝利→ベゴニア賞を連勝中のメイショウレガーロの実力も半端じゃないと…。
確かに、デイラニの血統は超一流だが、せこく(?)ダートで2勝を挙げてきたところが引っかかる。陣営は「この時期の完成度は兄より高い」(葛西助手)と強調するが、未知数の芝で本当にベストパフォーマンスを期待できるのか。
一方、メイショウレガーロは2000mが未知の領域。もともと頭の高いフォームを考えると、距離延長がプラスになるとは思えないし、こちらも危険な人気馬だ。
前置きが長くなったが、本命にはサンツェッペリンを推す。
その根拠は山ほどある。まず、長くいい脚を使えること。前走のホープフルS2着はまさに真骨頂。惜しくも2着に終わったが、相手はディープインパクトの半弟ニュービギニングだ。レース終了後に五十嵐冬騎手は「最後は血に負けました」と、兄をほうふつさせる“鬼脚”に、お手上げポーズで周囲の笑いを誘ったものだ。
しかし、今回のメンバーなら決して恐れることはない。来週の自己条件(若竹賞=芝1800m)とはかりにかけ、敢然と挑戦してきたのも、陣営に勝算があればこそだ。「最低でも2着を確保して賞金を加算したい」と、斎藤誠師はしっかりとクラシックを見据えている。
3戦ぶりにコンビ復活した松岡騎手の思い入れも相当強い。というのも、サンツェッペリンが育成時代、牧場まで足を運び、自ら騎乗してほれ込んだ馬なのだ。旧前田厩舎で兄弟弟子同様の間柄だった、斎藤誠師の厩舎開業に合わせて、この馬を薦めた責任(クラシックに出走させる)もある。
男の約束を果たさなければ“騎手の一分”が立たない。血統(テンビー)は地味だが、この一戦にかける執念はどの陣営よりも熱い。