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2011年センバツ大会特集(4) 「商・工業校がない!」21世紀枠の意義とは

 早いものである。3月23日に開幕した『第83回選抜高校野球大会』(以下センバツ)は、「21世紀枠」が導入されて11回目を数える。その「21世紀枠」が甲子園と、高校野球界にもたらせた影響とは何だろうか−−。

 主催者側は今大会の21世紀枠の出場校を決めるにあたって、先に『改革検討委員会』を設けている。そこで選考に関する規定の一部が“微調整”された。
 まず、推薦校となり得る条件として、「秋季・都道府県大会の8強以上」と記されていたが、そこに「原則として」の文言が加わり、「最後の(甲子園)出場から30年以上遠ざかって…」の一文から「30年」がなくなり、「より大会から遠ざかって」という表現に改められた。「8強」、「30年以上」なる数字的な規定がなくなった分、選考はむしろ曖昧になったと見るべきだろう。

 しかし、曖昧もまた、大会の興味を高める要素にもなりそうである。
 過去10回、21世紀枠で甲子園に出場した計23校のなかでベスト4に進出したのは、2校。ベスト16入りした高校は5校ある。初戦敗退を喫した高校も多いが、ワンサイドゲームを許した高校は1つもない。
 今大会は大館鳳鳴(秋田)、佐渡(新潟)、城南(徳島)の3校が選出されたが、マスコミ各社は「きっと選ばれる」と予想していた高校もあった。その予想は見事に外れたのだが…。それは、昨秋の県大会で準優勝を果たした九州圏の商業高校である。同校は過疎・高齢化などの事情で、1学年3クラスにもかかわらず、野球部員が定年割れした年度もあった。僅か12人の部員でノーマークから決勝戦まで勝ち上がっていった。
 「畜産業の被害を被った地域の高校なので、彼らの健闘は大いに話題になりました」
 大多数のマスコミがその商業高校の当確を予想した理由である。
 少し前だが、畜産農家の危機が全国でも大きく取り上げられていた。そんな地域の小さな商業高校の躍進は地元関係者のみならず、日本中の勇気になると思った。

 高校野球界における商業高校の活躍は、「時代背景や社会情勢を表す映し鏡」ではないだろうか。
 04年、アマチュア球界に関する拙著をまとめた際、四国・高校野球界の重鎮に話を聞くことができた。その方は地元の古豪・高知商などを指し、「昭和50年代の前半までは簿記、検定資格などが取得できる利点もあって、有望中学生は進んで商・工業高校に進学していた」と教えてくれた。
 「でも、高校生が当たり前のように大学進学する時代になって、その人気は普通科の高校や私立の付属・系列高校に奪われてしまった。最近(04年当時)、商業高校の高校名を甲子園で聞かないのはそのせいかな?」
 重鎮はそんなふうに語っていた。それから数年がまた経過し、商・工業高校の逆襲が始めた。それは学科の改編によるものだと言う。パソコンの普及後、コンピューター関連の学科、科目が新設されたことにより、有望中学生を再び振り向かせることができたそうだ。

 今大会の出場校を見渡すと、校名に「商・工業」の付いた高校はない。新興高校もあった。大学の付属・系列校、常連校も多かったが、共学や新学科設置にともない、校名を改めた学校もあった。少子化という時代背景によるものだろう。
 21世紀枠の3校は奇しくも、公立高校である。公立が旋風を起こす話も珍しくなくなった。昨今では、公立、私立で線引きをするのも、あまり意味がなくなってきた。高校野球とは、人(=監督、有望選手)、地域(=地元の支援、部員たちによる地元奉仕活動)、環境(=行政支援、練習施設)で、一気に勢力分布図も塗り変わる。生まれ育った郷里を思うだけでなく、高校名から「社会情勢」や「日常生活」を考えながら球児を応援するのも悪くない。センバツにはそんな楽しみ方もある。

 21世紀枠のいちばん重要な選考材料は、「当該校の生徒、他校、地域に良い影響を与えた高校」と記されている。その規約文が曖昧になればなるほど、より幅広い候補校を選出できる。そんなふうに考えると、曖昧な規約も悪くないと思う。(スポーツライター・美山和也)

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