バリントンの活躍は大きいが、そのマエケンの不調は気になる。昨季の勤続疲労を日適する声も聞かれたが、マエケンは二軍とはいえ、ルーキーイヤーから先発ローテーションで登板してきた。不振は『統一球』の影響ではないだろうか。
開幕直前、マエケンは野球専門誌の企画で『統一球の心象』について「滑りやすい」「スライダーやカットボールなど小さく動かす変化球は、曲がり具合を把握しないと失投になりかねない」とコメントしていた。右打者の外角球が「ボールカウント」となることが多く、甘く入ったスライダー、ストレートを狙い打ちされるケースも多い。ツーシーム系の変化球を得意とする投手は『統一球』にハマったようだが、マエケンタイプの投手は“違和感”をなくすまで、もう少し時間が掛かりそうだ。
交流戦の成績は3勝3敗1分け(5月25日時点)。この好調さを維持するには、打線がさらに奮起する必要がある。
「近年は打高低投」と言ったが、広島打線はリーグトップを争うような破壊力があったわけではない。22歳の新鋭・丸佳浩の活躍は大きい。首脳陣は昨季、ファームトップの打率を残した丸の飛躍を計算していたらしいが、岩本貴裕(25)の不振は予想できなかった。キャンプでは打撃好調に見えた。昨季改造した『ノーステップ打法』に迷いが出たのだろうか。セ・リーグ首位打者の廣瀬純(32)が右太股裏の故障(右大腿二頭筋損傷)で途中退場した5月20日、岩本がその代役に抜擢された。今季、廣瀬の1日も早い復帰が待たれるが、岩本にも復調のきっかけを掴んでもらいたい。廣瀬の復帰はもちろんだが、岩本の復調はキーポイントになる。「3番・丸、4番・トレーシー、5番・栗原」というクリーンアップは迫力に欠けるからだ。栗原の実績はともかく、交流戦における広島打線を改めて見てみると、3割バッターが1人もいないのだ(規定打席到達者)。トレーシーは変化球にも対応できる日本向きのバッターではあるが、得点圏打率は2割5分6厘。通算打率よりも低いのだ(2割6分7厘)。4番が好機に弱いようでは、相手藤手にナメられる…。
広島はトレードに積極的なチームではない。ペナントレース中盤以降のプラスアルファーがあるとすれば、昨季、ファームで100試合に出場した堂林翔太(19)、ファーム戦規定打席に到達した安部友裕(21)、守備難だが、打撃力のある小窪哲也(26)といったところが予想されるが、彼らに関する明るい情報は入っていない。
丸ばかりが注目されているが、捕手・會澤翼(23)の成長も大きい。
開幕序盤戦はバリントン、篠田、丸が牽引した。マエケンが復調し、大竹が先発ローテーションに完全復帰できれば、投手陣はそれ相応の布陣になる。あとは打撃陣だが、自前の育成戦力から中盤戦以降を引っ張る『第2ロケット』が見つからなければ、今季は思い切って『駆け込みのトレード補強』をしてもいいのではないだろうか。(スポーツライター・飯山満)
※前田健太投手の統一球に関するコメントは『週刊ベースボール』(2011年4月11日号)を参考にいたしました。