都内の某キャバ嬢、留美はアパレル系が本業だったが、週3でキャバでバイトをしていた。そんな彼女のところにキャバの同僚、真奈が突然転がり込んできた。最初は一週間だけでいいからと言われたのだが、何かと言い訳をされて、半年は居座られた。「なかなか都合のいい物件は見つからないから仕方ないか」と留美は自分を納得させたが、真奈もだんだん図々しくなり、楽しみにとっておいたお菓子をぺろっと悪びれもなく食べてしまうわ、留美の基化粧品一式を当たり前のようにがんがんと使い込む有様。
せめて家賃の半分でも払っているならいざ知らず、最近では、気がつくと家の中が真奈の荷物でだんだん溢れかえっている状態。
そろそろ釘を刺そうかと、出勤前の真奈に声をかけようとしたら、
「言い忘れてた。今日留美ちゃんどっか泊まって来てくれないかなぁ? 彼が、うちに来たいんだって。真奈、うん、いいよって答えちゃった。それでね、彼がくるってことはさぁ…わかるよね?」
「はぁ?? なんであんたの彼がうちに来てわたしが出てかないといけないの??」
「だって、真奈、家なき子なんていえないもん」
「だからって、人の家に勝手に彼氏連れ込むってどういうことよ! 誰がここ借りてると思ってるのよ? 大体最初から彼氏の家においてもらえばよかったじゃないのよ!」
「だってぇぇ…彼氏、奥さんと子供いるから」
留美は頭を抱えた。居座っている友達は、寄生虫と化すだけでなく不倫までかましていたのだった。その上相手を自分の部屋に勝手に呼ぼうとするわ、それを全然悪いと思ってないわで、そりゃあ、お釈迦様だってキレるであろう。
怒りのスイッチが入った留美は、真奈の服や荷物を玄関の外にぼんぼん放り投げた。
「何すんのよぉぉ! やめてぇぇっ、この服高いのに!」
「うるさい、わたしは泥棒猫の犯罪の片棒担ぐ気はないっ!」
留美は部屋の鍵を閉め、泣き喚く真奈を背にして、店に向かった。その後、遅れること二時間後、真奈が息もたえだえに出勤してきた。
仕事が終わって、急いで自宅に戻ると、真奈の荷物は玄関先から消えていた。後で同僚のキャバ嬢に聞いて知ったのだけど、驚くことにお客さんの家に一時的においてもらうことになったらしい。
それって…大丈夫なの? と一瞬心配になったが、真面目に部屋を探さず、店の寮に避難するくらいのことをしなかった真奈が悪いのだから、もはや知ったことではない。
留美はようやくゆっくり眠れるという安堵感で、部屋へ戻った。
文・二ノ宮さな…OL、キャバクラ嬢を経てライターに。広報誌からBL同人誌など幅広いジャンルを手がける。風水、タロット、ダウジングのプロフェッショナルでもある。ツイッターは@llsanachanll