昨シーズン、3年連続15勝以上、防御率1点台の成績をあげたダルビッシュの年俸は6000万円上がって3億3000万に跳ね上がっている。「健全経営をモットーにする日本ハムが払える上限だろう。FAで巨人入りした小笠原を引き留めなかったのも、年俸が高くなりすぎるからで、その点、日本ハムの方針はハッキリしていてブレがない。ポスティングでダルビッシュを一番高く売れる今がチャンスだと割り切って、メジャーへ送り出すのではいないか」。球界関係者は、日本ハム側の台所事情を明かす。
確かに、今が旬のダルビッシュを売れば、日本のエース・松坂大輔獲得のためにレッドソックスが西武に払った60億円の落札金を上回る可能性は大だろう。球団内部には「本拠地を札幌に移転した後に入団した、札幌の顔のダルビッシュがいなくなったら、球団身売りの危機に陥る。何があってもダルビッシュだけは手放せない」という強い反対論もあるが、大勢は容認論だという。「父親が最終的にメジャー行きを強く勧めているし、FAで行かれれば、球団には何のメリットもないのだから」とのシビアな現実的な計算からだ。
球団側がいくら認めても従来のようにダルビッシュにその気がなければ、話は進まないが、本人にも心境の変化が見られるという。ダルビッシュがメジャーに嫌悪感を示していた理由を日本ハム関係者がこう打ち明ける。「ダルビッシュは神経質で環境が少しでも変わると、全く力を出せない。だからこれまでメジャー行きを否定してきたのだろう」と。だから千葉マリンなどのアウトドアの球場が苦手だったというのだ。が、昨年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で著しく変ぼうを遂げている。
ドーム球場でなくとも問題なし。一番プレッシャーのかかる準決勝、決勝では抑えの体験までしてさらなる勝負度胸もついている。最高レベルのメジャーリーガーとの直接対決で自信もついただろうし、次元の高い勝負の醍醐味を知っただろう。昨年の日本シリーズ右手人差し指を疲労骨折していながら勝利投手。その後遺症が不安視されたが、宮崎の自主トレでピッチング練習して完全復活をアピールしたように、環境に大きく左右されるようなやわな選手ではなく、タフなタイプにひょう変しているのだ。それだけに、メジャーリーグに嫌悪感を抱く理由がなくなっている。
自らの右腕で今季、リーグ連覇、4年ぶりの日本一を達成すれば、日本球界を卒業してメジャー挑戦。ファンが夢見る、マリナーズ・イチロー、エンゼルス・松井との一騎打ちが見られるかもしれない。