ところが、『賃貸住宅の原状回復を巡るトラブルとガイドライン』(国交省)からは妙な矛盾が浮かび上がる。
「エアコン設置による壁のビス穴については、通常摩耗に属するため原状回復義務は生じないのですが、L字型金具を用いた転倒防止のネジ止めは、賃貸物件を損傷する行為となるため『賃貸借契約違反』となってしまい、退去の際に原状回復義務が生じるのです」(防災ジャーナリスト)
「突っ張り棒」では横揺れに弱い。特に高層マンションでは“長周期地震動”という通常より大きな横揺れになるから効き目が薄い。
「熱中症予防になるという理由のあるエアコンのネジ穴ならよくて、生死に直結する家具の転倒防止のネジ穴がダメとは、優先順位が逆と言わざるを得ないでしょう」(同)
『東京防災』でネジ止めを推奨し、国交省のガイドラインに準じて都営住宅を管轄する都は「運用について取り決めるのは5年に一度で、次に改正するとしても4年後」だという。4年以内に“首都直下地震”が起きたらどうするのか。
「分譲物件についてもネジ穴などの瑕疵があると、いざ売買しようとするときに物件価値が下がるからという理由で、家具などの固定化を施していない人たちも多い。一刻も早くやった方が賢明です」(同)
国内で地震から逃れられる場所はない。公営・公立住宅の家具転倒防止のための壁のネジ穴について、原状回復義務を免除している自治体もあるのだから、バカな規制は一刻も早く統一整理してもらいたい。