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“視力ゼロ”になる「老眼」の危険シグナル(2)

 小俣院長によると、糖尿病にかかって5年以上経過していると、網膜に何らかの異常をきたしている人が少なくないという。
 「血糖コントロールの状態が長期間悪いまま放置すると、網膜をはじめとした眼組織にさまざまな障害を起こします。血糖値が高い状態が続けば、網膜にある毛細血管が詰まったり変形したりするなどの負担が加わるため、血流が悪くなる。当然、全体に酸素が行き渡らなくなるため、網膜が酸欠状態になってしまいます。そこで、酸欠状態を補うために、網膜は新しい血管(新生血管)を作り、酸素を取り入れようとします。しかし、新生血管は脆く傷がつきやすいので、簡単に破れて出血を引き起こしてしまうのです」(同)

 さらに出血した状態を放置すると、「網膜に増殖組織というかさぶたのような膜が生じ、これが原因で網膜剥離が起こる」という。
 ここで要注意なのは、内科を受診し血糖コントロールを行っていると思っていても、昔の悪い状態のツケが今になってやってくるタイムラグがあることだ。いずれにしても、糖尿病にかかったら、定期的に眼科を受診することだ。

 糖尿病網膜症と並んで眼底出血を起こす代表的な原因が、網膜静脈閉塞症である。高血圧や動脈硬化が原因で網膜の静脈が閉塞する病気だ。
 「網膜静脈閉塞症は、50歳以上の年配の方に起きやすい病気で、患者さんの80%が高血圧の人です。これは、高血圧によって網膜の血管が傷められ、動脈硬化を起こすからです。静脈が詰まると、そこまで流れてきた血液の行くてが阻まれ、静脈から血液が溢れ出します。溢れた血液は、網膜の表面にカーテンのように広がる眼底出血となったり、網膜内に閉じ込められ、網膜浮腫(網膜の腫れ)を起こします。症状は、眼底出血では出血が広がっている部分の視野が欠けたり、網膜浮腫では視力が低下します。網膜のほぼ中央にある視力の最も鋭敏な部分に当たる黄斑に出血や浮腫があると、視力は極端に低下します」(小俣院長)

 どの血管が詰まったかによって、症状の表れ方は異なり、視力がほぼ失われてしまうこともあれば、本人は全く気付かないでいることもあるという。
 網膜の静脈は、眼球の後方にある視神経乳頭で1本になり、そこを終点に集合するように、網膜全体に枝分かれして広がっている。静脈の枝の部分が閉塞した場合を『網膜静脈分枝閉塞症』と呼び、80%を占める。
 「網膜は大変薄い組織なため、網膜内の動脈と静脈が交差している部分では、血管の外膜を共有しています。このため、交差部分の動脈に動脈硬化が起きていると、静脈もその影響を受けて、血管内径が狭くなったり血液の流れがよどんだりして、血栓が形成されます。網膜静脈分枝閉塞症は主に、この交差部の血栓によって、血流が途絶えることで発病します。閉塞した部分より末梢側の血管から、行き場を失った血液があふれ出して、眼底出血や網膜浮腫を起こします」(同)

 一般に症状は、閉塞部位が乳頭に近いほど重く、逆に末端の静脈が詰まって出血が狭い範囲に限られていれば、全く気付かないこともある。加齢での衰えは体のさまざまな部分に及ぶが、その中でも目は一番大切な部分だ。定期的なチェックを欠かしてはならない。

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