とはいえ、無理に抑えようとしてもダメ。その最たる例が前走の神戸新聞杯(4着)だった。1コーナーで、セイウンワンダーが行き出した時に後ろに下げた。そのことで馬は、すでに嫌気を差していたと杉村助手は振り返る。
「結果的に、あのままリーチザクラウンをマークした方が、馬の気持ちを損なわずに済んだ。ただ、それでも最後は格好は付けている」
ここまで繊細で難しい馬が、平凡な能力しか持ち合わせていなければ、到底、3000メートルの長丁場挑戦は無謀と断言できる。ただ、アンライの場合、“瞬間移動”ができる優れた瞬発力があり、長距離に耐えうるスタミナも持ち合わせている。2000メートルの天皇賞・秋ではなく、あえてここを選択したのは折り合い克服に自信があるからこそだろう。
「前走でやっぱり力が違うと再認識した。三千を走り切る資質のある馬。要は道中、いかに楽をさせて走らせるかだけなんだ」
もちろん、陣営は指をくわえて本番を待っているわけではない。
ハードワークを施し、テンションが上がってしまった前走の反省を踏まえ、この中間は毎週、岩田騎手を乗せる熱の入れようだ。
1週前追い切り(Wコース=7F98秒4)では落ち着き十分で、“危うさ”をまったく見せなかった。杉村助手は「ネッキリハッキリやらなくていい。その方が馬に落ち着きが出る」と笑顔を見せる。
脚をためた時の爆発力は皐月賞の“ワープ”で証明済み。
菊仕様のアンライがどれだけ切れるのか。大いに見物だ。
【最終追いVTR】Wコースの単走追いで、前半から折り合いに専念。6F80秒6→65秒0→51秒2→37秒4→12秒4(一杯)をマークした。抜群の手応えで直線に入ると、鞍上の仕掛けに軽快な伸び。休み明けだった前走時より落ち着きが出て、気配は上向いている。