一番人気はなんといっても横浜だが、近年、熱い視線が注がれているのが多摩地区だ。今クールだけでも3作品でドラマの舞台、ロケ地が多摩地区に設定されている。
会社をドロップアウトした主人公が郊外のアパートで生活する様子を描いた『凪のお暇』で、主人公の凪が暮らす「エレガンスパレス」のロケ地は八王子市内に実在するアパート。失業手当をもらいに行く場面はハローワーク立川で撮影されており、黒木華と市川実日子が多摩都市モノレール沿いの「サンサンロード」を連れ立って歩く場面も。赤い鬼の滑り台で有名な「錦第二公園」など、立川市内で撮影されたカットも使われていた。原作でも凪の引越し先は立川市内だが、実在する場所や地名が登場することでぐっと生活感が増している。
三鷹市出身の岡田惠和が脚本を手掛ける『セミオトコ』で、木南晴夏演じるヒロイン由香が働くのは「国分寺中央食品」。出勤途中に通るのは、国分寺市内にある散策コース「お鷹の道・真姿の池」だ。由香が住むアパートの外観は西東京市にある東京大学の「生態調和農学機構」で撮影されるなど、自然豊かな多摩地区の魅力がふんだん。地味系女子と山田涼介演じるセミオトコのひと夏の恋をロマンチックに演出している。
社会人ラグビーを扱った『ノーサイド・ゲーム』の舞台は府中市。原作の横浜から府中に設定を変えた理由はラグビーにとって最高の環境があること。ラグビー・トップリーグに所属するサントリーサンゴリアスと東芝ブレイブルーパスの本拠地が府中市で、『ノーサイド・ゲーム』の撮影では東芝のグラウンドを借りている。「ラグビーのまち・府中」をPRしようと市も全面的に協力しており、ドラマの随所に府中市内の風景が登場する。
多摩地区でのロケが増えている背景には、ドラマの舞台設定が郊外に移っていることや、都心からのアクセスが便利で機材の運搬や移動が簡単というロケハン事情がある。府中市内にある「三宝食堂」は多くのドラマに登場しているが、駅近の割に交通量が少なく、道幅も広いなど撮影に好都合な立地条件を備えている。
「最近では、『アニメの聖地』をPRする立川市のほか、フィルム・コミッションでロケを誘致する自治体も増えています。自然が豊かで閑静な住宅地が広がる多摩地区は地方都市のような風情もあり、日常を描くドラマにはうってつけなんです」(ドラマライター)
果たして多摩地区はドラマの聖地となるか?