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愛知県西三河地方の伝説 「薬師如来転説のクスノキ」

 愛知県豊田市挙母町にある挙母(ころも)神社は江戸時代から「子守大明神」・「子守の宮」といわれ、歴代の挙母藩主が敬い、またこの地方の庶民からの崇敬の中心となっていた。明治4(1871)年に県社として現在の「挙母神社」と改められた。挙母神社は子どもの成長を見守る神様として「お子守さん」として庶民から親しまれてきた。それゆえに、安産祈願、初宮参り、七五三参りに多くの参拝者が訪れる。毎年、10月の第三土・日の2日間には神社の祭礼である「挙母まつり」が行われる。

 挙母神社の境内にあるクスノキは根廻り9.5m、目通り6.5m、高さ25m、樹齢650年と推定され、昭和41(1966)年5月14日、豊田市の天然記念物に指定されている。挙母神社の創建は「挙母記」・「鎌倉実記」などの文献による文治年間(1185〜1189)と「挙母祀」による建久年間(1190〜1198)の二説あるが、いずれも800年以上も前の創建なので、クスノキは挙母神社の創建後に植えられたことになる。

 元亀3(172)年、挙母神社の境内に隣接している浄土宗輝雲山瑞光院が火災に見舞われた。その時、薬師堂は焼けてしまったが、ご本尊の薬師如来像はこのクスノキの下で難を避けられたという言い伝えが残っている。クスノキは常緑樹で、火災に強いと証明された一例でもある。またクスノキは「樟脳」の原料にもなり、無煙火薬、フィルムなどの製造、ナフタリン、防臭剤、医薬品に使用され、彫刻や木魚などの材料にもなっている。挙母神社の境内にはクスノキの他にも豊田市の名木に指定されている銀杏や鹿児の木、櫨の木なども植えられている。

(写真「挙母神社のクスノキ」愛知県豊田市挙母町5丁目1番地)

(「三州の河の住人」皆月 斜 山口敏太郎事務所)

参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou

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