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キャバ嬢が生まれる瞬間(23)〜小説家になるためにキャバ嬢になった女〜

 飯塚藍子(26歳・仮名)

 私はなんとしてでも芥川賞が獲りたいんです。そのために小説は毎日最低でも、1200文字は書くようにしています。今まで数々の文藝賞に応募し続け、入賞こそはありませんでしたが、大きな賞で二次通過はしたことがあります。ほかにも書いた小説はネットにアップしたり、自費で印刷し、フリーマーケットで売ったりして何人かのファンもいます。そんなファンの人に感想を聞くと、皆私の小説がおもしろいって言ってくれるんですよね。それが私の原動力。なのにどうして賞が獲れないのでしょうか。

 そこで私はファン以外の友人に読んでもらうことにしました。友人は普段から小説を多く読んでいる人間ではないですが、お世辞のないダイレクトな意見を聞きたかったからです。

 そして実際に読んでもらった所、彼女は「文章と内容が硬すぎる」と言うのです。さらに「もっと普段から広い世界を見たほうがいい」と。たしかに私は幼い頃から勉強ばかり。都内でトップクラスの学校を卒業しましたが、部屋にはテレビもなく世の中の流行などにはとても疎いのです。

 そこで思いついたのが、キャバ嬢になるということ。夜の世界を知ればもっとおもしろい作品が書けるような気がするんですよね。実際にキャバクラで働いてみて、タバコの火を付け忘れたりと私は謝ってばかりですが、様々なタイプのお客さんが来るだけでなく、裏での嬢たちの派閥争いなど、ネタはたくさんありそうです。

 また接客中も芸能などの話題にはついていけませんが、他の女の子達があまりわからない政治経済に関しては強いので、一部のお客さんには喜ばれます。それとこの世界では枕営業があまりよくないと聞きますが、小説のネタになりそうならば、客とセックスしても構わないと私は思っています。

 今は、キャバクラを舞台にした小説を執筆中です。この作品を書き上げるまではこの世界を辞めるつもりはありません。

(取材/構成・篠田エレナ)

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