2度目の立ち合いで左上手を許し、そのまま強烈な引きつけを食らった白鵬。しかし、そこは百戦錬磨の大横綱。右半身を使い巧みに栃ノ心の左上手を切ると、流れで出し投げを見舞って相手をグラつかせる。
その隙を見逃すことなく、右四つ左上手の体勢をとった白鵬。数秒ほど機を窺った後、盤石の寄りで栃ノ心との勝負にピリオドを打った。
前回の対戦となった昨年秋場所12日目では、左上手を取った栃ノ心に絶妙なすくい投げを合わせた白鵬。この時見せた状況判断力が、今場所の対戦でも存分に生かされたといっても過言ではないだろう。
これで前述の秋場所以来となる、初日からの12連勝。前回は残り3日間も星を落とすことなく、全勝で41回目の優勝を掴んだ。1敗に逸ノ城(西前頭4枚目)、2敗に高安(東大関)、豪栄道(西大関)、碧山(東前頭7枚目)、琴奨菊(西前頭8枚目)が控えているとはいえ、今場所も視界良好であることは疑いようがない。
「右膝血腫、左足関節炎」で途中休場した先場所は、10連勝から御嶽海(東小結/当時西小結)、玉鷲(西関脇)、貴景勝(東関脇)に3連敗を喫し、まさかのV逸となった。この主要因となった怪我が再発する可能性も無くはないが、ここまでの12日間を考えるとその線は薄い。
また、自身に土をつけた先の3名には、9日目から11日目にかけて順番に対戦・勝利してもいる。先場所の“意趣返し”も完了し、心身ともに充実している現状を考えると、他の力士が付け入る隙はごく僅かしか無いようにも思われる。
今から18年前の春場所で初土俵を踏み、その後押しも押されもせぬ大横綱へと駆け上がった白鵬。平成の時代が終わりを告げようとする中、“白鵬”時代の盤石さは今なお際立っている。
文 / 柴田雅人