11月9日に海外FA権行使を表明し、メジャー移籍の道を探っていたソフトバンク・松田宣浩内野手(32)が、12月24日、残留を宣言。4年総額16億円プラス出来高(推定)の超破格な条件で、ソフトバンクと契約した。
関係者はもともと懐疑的な目で見ていた。元来、松田にはさほどメジャー願望がなかったからだ。FA宣言した際も、「自分がメジャーでどう評価されているか、メジャーでプレーする可能性があるかを探ってみたい」と語っており、その時点で、すでに残留がチラついていた。
残留を決めた理由は、王貞治会長から直々に残留要請を受けたこと、メジャーから本職の三塁以外の二塁、遊撃を守ることを提示されたためとしている。
松田には複数の球団が興味を示し、最も獲得に積極的だったパドレスは2年総額4億円(推定)の提示をしたとされる。
ここ数年、メジャーで成功を収めた日本人内野手はいない。ポスティングでツインズ入りした西岡剛内野手は満足な成績を残せず、自ら3年目の契約解除を申し出て帰国。FAでアスレチックスに移籍した中島裕之内野手は、2年間で1度もメジャーでプレーできぬまま、日本球界に戻った。川崎宗則内野手(マリナーズ→ブルージェイズ)や、田中賢介内野手(ジャイアンツ→レンジャーズ)はメジャー契約すら勝ち取れなかった。
これでは、メジャーでの日本人内野手への評価は下がる一方で、パドレスが提示した条件は妥当な線といえる。とても、ソフトバンクが出していたような好条件が、メジャー球団から引き出せるとは思えなかった。
昨オフには、鳥谷敬内野手が海外FA権を行使して、メジャー球団と交渉したが、色よいオファーはなく、阪神に残留した。
形の上では、鳥谷と同じ結果になったが、違う点はメジャー挑戦への本気度。松田の場合は「条件が悪くなっても、メジャーで挑戦してみたい」といった強いあこがれはみられず、単にメジャーの評価を聞くためのFA宣言だったようにしか思えない。
結局、ソフトバンクと、獲得に動いたメジャー球団が振り回されただけ。ソフトバンクにとっては一件落着となったが、松田のFA権行使は全く人騒がせなものだったようだ。
(落合一郎)