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朱塗りの社殿が笹ゆりに染まる「三枝祭」──奈良・率川神社

 奈良市内きっての古社・率川(いさがわ)神社の例祭は6月17日。「三枝祭(さいくさのまつり)」として知られ、笹ゆりの花をもって祭神をお慰めすることから、別名「ゆり祭」とも呼ばれる。古式ゆかしい華麗な祭典に、大勢の参拝者がつめかけた。

 率川神社は、桜井市に鎮座する大和国一の宮・大神(おおみわ)神社の摂社。神武天皇の皇后である媛蹈韛五十鈴姫命(ひめたたらいすずひめのみこと)を中殿に、左右に父神の狭井(さい)大神、母神の玉櫛姫命を祀る。狭井大神とは大神神社の祭神・大物主神のこと。また“さい”とは笹ゆりの古名でもある。
 媛蹈韛五十鈴姫命の住居は三輪山麓、笹ゆり咲き乱れる狭井川のほとりだったとされる。その縁故により、神前に供えられる黒酒(濁酒)、白酒(清酒)を入れた酒樽は笹ゆりで飾り付けられ、神楽「うま酒みわの舞」を奏す巫女たちは笹ゆりを掲げる。すべてが静かに進行する祭だが、どこまでも優しく麗しい。
 笹ゆりは三輪山で摘み取られ、前日運ばれてきたもの。薬草としても使用され、ゆえにこの祭にも本社の「鎮花祭」同様に疫病除けの祈りが込められている。その昔は、国家の祭に数えられる重要な祭儀であった。

 祭では七媛女(ななおとめ)、ゆり姫らの“華”がさらに彩りを添える。七媛女は、神武天皇が行き会った七人の乙女から姫を見初めた『古事記』の故事に因むもの。祭典の後、ゆり姫らは稚児行列を伴い、一時間近く市内を巡行。真夏を思わせる暑さとはいえ、天候に恵まれたのはなによりだった。
 また、率川神社から300mほど北の漢国(かんごう)神社でもこの日、山ゆりが捧げられる「三枝祭(さきぐさまつり)」が行われた。

写真:「神前に捧げられる笹ゆりの酒樽」

神社ライター 宮家美樹

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