ところが、『M-1』よりさらに長く、1年にわたって繰り広げられるのが『にちようチャップリン』(テレビ東京系)だ。年末開催の“グランドチャンピオン大会”への出場権をかけて、1年ぶっ通しで展開されるネタバトル。審査するのは、特別審査員のスピードワゴン・井戸田潤とアンガールズ・田中卓志、そして観覧客の46人だ。リアルタイムでジャッジしていき、暫定方式で得点を発表。上位2組が“月間チャンピオン大会”に進出し、月間チャンピオンが決定し、月間チャンピオン同士で戦ってグランドチャンピオンが決定する。
エントリーの制限は、ない。総勢168組の参加芸人の内訳は、あらゆる賞レースで勝ち抜いた覇者やファイナリスト、一発屋芸人として一世を風靡した者、ライブ人気が抜群のド新人、無名の苦労芸人ほか。芸人全人類が一緒くたにされている。
ステージ進行は千鳥。バックステージリポーターはハリセンボン。見届け人は、ウッチャンナンチャン・内村光良と土田晃之。現在のバラエティ界で、スケジュールを抑えることが困難な人気者たちを、日曜ゴールデンにギュッと集めた。これだけの個性がそろっているにもかかわらず、コンセンサスがしっかり取れているのが特徴だ。
千鳥とハリセンは、自身のおもしろさを封印。観る者がステージ芸人に集中できる環境を整え、進行に徹する。田中にはキモさがなく、ネタを起承転結や秒・分単位で分析する。井戸田は、さながら情報番組のコメンテーターの口調で斬りこむ。そんななか変わらないのは、同番組が立ち上がるきっかけとなった内村。菩薩か、仏か。後輩芸人を見守る目は、いつだって優しい。
「若手芸人が出る場を作りたい」。内村の切なる願いではじまった“チャップリン”シリーズは、深夜枠、単発、特番、ロケなどの試行錯誤を重ねて、今は純粋なネタ番組となった。ネタでは数字が取れないといわれる今のご時世では、大きな博打といえる。昨年は芸歴5年のマルセイユが優勝。今年8月には、アインシュタインが満点の100点を叩き出している。
中途半端な知名度でも、おもしろければそれでイイのだ。テレ東は、至極真摯に芸人と向き合っている。
(伊藤雅奈子)