3月22日、王貞治・ソフトバンク球団会長(78)が、引退したイチローに労いの言葉を送った。“監督・イチロー”について、「僕は見たい」と言い切った王会長だが、そこに「まずは解放してあげようよ」と付け加えたのだ。この言葉が、「意味深長だ」と、ファンの想像をかき立てている。
「ソフトバンクはメジャーに残ることが難しくなった松坂大輔(38、現中日)に、即座にオファーを出し、高額年俸も保障しました。松坂の実績、地位に配慮した厚遇で迎え入れたのは、球界と球団の将来のためです。『日本の松坂』として球界のために働くであろう彼を抱え、その時、ホークスに籍があれば最高という考えです」(ベテラン記者)
王会長とソフトバンクグループは、「ホークスの監督」として、イチローを迎え入れたいわけではない。王会長の“後継者”として迎え入れようとしているのだ。
「王会長とイチローには、いくつかの共通点があるんです。王会長は自身が理事長を務める世界少年野球推進財団を通じて、少年野球大会を開催してきました。今年は東京五輪の舞台ともなる福島で開かれます。イチローも地元愛知県で少年野球大会をサポートしてきました」(同)
ともに、野球普及に尽力してきた球界人。こうした活動をさらに広げるとの名目で、イチローにアプローチしようとしているのだ。
「第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では王会長が監督として先頭に立ち、続くイチローたちが活躍し、世界一になりました。信頼関係はいうまでもなく、次期ホークス監督もあるかもしれません」(スポーツ紙記者)
王会長は先の会見で「人望とは、後からついてくるもの」との持論を展開していた。しかし、イチローと王会長の接近をこころよく思っていない勢力もある。
「古巣のオリックスが、黙っているはずがありません。イチローがメジャーにいる時も、あたかもチームの一員のように扱ってきましたから。オフの期間、練習施設を提供してきたのは、将来、監督として帰還させるためです」(球界関係者)
オリックス・宮内義彦オーナーとイチローとの関係に、ソフトバンクの孫正義オーナーが割って入ってくるとなれば、全面戦争は避けられそうにない。
「休養中のイチローに、どちらが先に会うかが見物です。でも、先に会うことで、彼の機嫌を損ねてしまうかもしれません。今はどう対処すべきか、両球団で検討されています」(同)
読売グループも傍観を決め込むとは思えない。イチローの争奪戦は、すでに始まっているのだ。