「同性愛に偏見はないし、人それぞれ自由があると思います。でも、BLというジャンルはどうしても好きになれなくて。読んでいて面白いと思わないし、どちらかというと、私は王道の少女漫画とかのほうが好きなんです。それでも、BLが好きな人のことを否定はしません。ただ、高校生のころ、いわゆる腐女子の同級生に嫌な思いをさせられたことがあって、そこから腐女子が苦手になりました…」
その同級生は、最初は「趣味の押し付け」から始めてきたのだという。
「『これ絶対に面白いから、読んで!』と、頼んでもいないのに、BL漫画を大量に持ってきて、無理矢理貸してくるんです。感想をメールでも直接会ってもしつこく聞かれて、『私にはちょっと合わなかったかな』とでも言ったら、激怒。『BLの面白さが分からないなんて、あんたは女子じゃない!』とか、理不尽なキレ方をされました」
徐々にその同級生と距離を置くようになったSさんだが、さらに迷惑をかけられてしまう。
「私の好きな人と、その同級生の好きな人が同じで。そのことを知られたら、『○○(好きな人)でBL書いてみたよ!』とか言われて、オリジナルBL小説と題した長文を毎日メールで送ってくるようになったんです。好きな人と仲のいい男子生徒から男性教師まで、ありとあらゆる人を“相手役”にしたBLでした。ただでさえBLが好きではない私にとっては、身近な人をそういう対象で見ること自体が理解できなかったので、そのうちメールも見なくなりました」
同級生の暴走は、これでは終わらなかった。
「なんと、その同級生が、好きな人本人にそのBL小説を学校で見せたんです。好きな人も周りも当然ドン引きしていましたが、あげくの果てに、私のことまで『Sもお仲間だから』と名前を出して。それ以来、私も好きな人に避けられるようになるし、散々な思いをしました」
腐女子ということ自体は1つの趣味であり、決して悪いことではない。ただ、どんな趣味を持っていたとしても「誰もが自分の趣味を好きだ」と思い込み、他人に押し付けるというのはいただけない。
文/浅利 水奈