地道に頑張っていれば、いつかは報われる。仕事に追われ、それでも給料は下がる一方の苦しい中高年に、カンパニーは間違いなく勇気を与えた。秋の天皇賞で史上最高齢となる8歳での初GI制覇。女傑ウオッカを問題にしなかったあの切れ味は、お見事の一語に尽きる。
しかし、それだけでは満足しない。これまであと一歩で逃していた頂点をつかみ取った以上、狙うはGI連覇だ。
「毎日王冠と天皇賞、この2戦はそれまでいまひとつだった東京できっちり結果を出せた。今度は得意のマイル戦だし、京都コースだからね。レースはすごくしやすいでしょう」と東田助手。
確かにマイル戦は、ベストの1800メートルに次いで3勝を挙げている得意距離。マイルCSも昨年は4着、一昨年も5着と差のないレースを続けてきた。
しかも今年になって、自慢の瞬発力にさらに磨きがかかった。以前は激しいレースや強い調教などが重なると、馬体重を減らしてしまうひ弱な面が残っていたが、今は違う。思い通りの攻め馬ができて、カイバもぺろりと平らげる。充実の証しが、前走の天皇賞・秋だ。上がり3Fは32秒9。その末脚はまぎれもなく現役屈指。まぎれが少なく、能力がストレートに反映されやすい京都のマイル戦なら、容易に差し切れるはずだ。
激戦となった前走の後も、陰りは一切見られない。「高齢馬という意識はまったく持っていない」と音無調教師が語るように、光沢のある毛づや、張りのある馬体はまるで若馬だ。
「この前は激しいレースだったけど体はすぐに戻った。とても8歳とは思えない回復力だし、一番の状態だと思えた前走をさらに上回るデキに仕上がるんじゃないかな」
現役最強のウオッカを力でねじ伏せた自信は絶大だ。すでにこの一戦を最後に、引退→種牡馬転向が発表されているが、それが惜しく思えるぐらい、今のカンパニーは強い輝きを放っている。2004年1月のデビューから実に5年10カ月。太く、長かった競走生活も集大成を迎える。
「3歳から息の長い活躍を見せてきてくれた。厩舎への貢献度は本当に高い。今回がラストランになるけど、いい形で締めくくってほしいね」。音無師は言葉に力を込めた。GI連覇を手土産に、北海道へ送り出すつもりだ。