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人物クローズアップ 映画「おっぱいバレー」監督 羽住英一郎が撮影秘話を語る

 奇抜なタイトルが話題を呼んでいる映画「おっぱいバレー」が18日から公開される。綾瀬はるか(24)演じる中学教師が、ダメ男子バレー部員と勝利と引き換えにおっぱいを見せる約束をする学園コメディー。このさわやかな世界をイチから作り上げた羽住英一郎監督(42)に話を聞いた。

 原作は水野宗徳の同名小説。プロデューサーが映像化権を獲得したものの、監督やヒロインが半年間も決まらず、一度はお流れになったそうだ。
 「別件でプロデューサーと打ち合わせをしていたとき、机の上に積んであった一冊の本が目に止まって。背表紙しか見えなかったけどタイトルのインパクトに引かれて。これ何ですか? って聞いたら、映画の案件だけど断わったって。なんかピンと来て借りて読んでみたら、思ったとおり面白い。監督なら私がやりますと言って、映画化の話を復活させたんです」

 主人公の美香子は新任の臨時教師。男子バレー部の顧問になったものの部員が5人しかおらず、やる気ゼロでボールにすら触ったことのない者ばかり。常に女のことしか頭になく、周囲は「馬鹿部」呼ばわり。そこで美香子が「頑張るなら先生なんでもする」と宣言したところ、部員から「試合に勝ったら先生のおっぱいを見せてくれ」と迫られ、断り切れず約束してしまう。部員らは一転して練習に励み、美香子も「おっぱいは見せたくないけど試合にも負けたくない」という複雑な心境に。ところが試合の直前、約束が学校にバレて大問題…という物語だ。

 「原作は実話を元にした話。笑えるけど、タイトルに似合わず感動もある。15年ほど前に『クール・ランニング』という映画があったでしょう。ジャマイカのボブスレー代表が冬季五輪に出場する実話をもとにした。あれに似た匂いを感じたんです。おっぱい先生とダメ中学生という内容がシンプルだし、結末も気になる。面白い映画になると直感しました」

 ただ、設定を大幅に変えた点が2つ。それは時代と場所。原作は現代の話だが、映画では30年前の1979年に設定した。
 「おっぱいなんて今じゃネットで簡単に見ることができるし、コンビニには成人雑誌が並んでいる。中学生とおっぱいの間に距離がないんです。でも30年前は中学生にとっておっぱいに関する情報が現在とは比較にならないほど少ない時代でした。しかも30年前は先生と生徒の関係もシンプルだったし。今は体罰やセクハラ、モンスターペアレンツなど、非常に難しい時代ですから」

 原作では静岡だった舞台も北九州に変更。静岡へロケハン(撮影地の下見)に行ったものの、30年前の街並みなど残っているはずもない。そんな折、北九州フィルム・コミッション(FC)が熱心に働きかけてきたという。フィルム・コミッションとは撮影場所の誘致や支援を行う、地方自治体の公的機関のことだ。

 「北九州へロケハンに行ったら“昭和の街”という設定にドンピシャ。製鉄業の街だけにバブルが来てないので、当時の雰囲気が残っているんです。しかもロケ地が決まっていない段階から、北九州FCは北九州市の教育委員会に諮って校舎探しまでやってくれて。現役の学校で撮影は無理ですから、校舎探しって大変なんです。おかげで最適な廃校が見つかりました。これも北九州に決めた理由のひとつですね」

 なかなか映画化が実現できなかった理由のひとつに主演女優選びが難航したこともある。綾瀬はるかを起用したのは、女性にも見てもらえる映画にしたかったからだ。
 「男性はタイトルに引かれて興味を抱くだろうけど、女性からはキワモノ映画だと思われるかも知れない。なのでヒロインの要素は女性からの共感を得られ、清潔感があり、おっぱいを見せる約束を強引に迫ればなんとなく押し切られそうな人(笑)。しかも綾瀬さんは美香子と同じ23歳。特に何も演出せず、素のまま演じてもらいました。今となっては綾瀬さん以外には考えられませんね」

 一方、男子中学生たちはオーディションで選出。ポイントはワイ談が好きで、常にエッチなことばかり考えていること。
 「その中から特にダメな6人を厳選(笑)。その中に“江ブー”というデブキャラがいるんですが、彼を演じた恵隆一郎君なんてクランクインの前に痩せようとしてましたからね、モテたい一心で。結局ヤセられなかったから、何の支障もなかったんですが。それぐらいダメダメでした(笑)」

 撮影中、そのダメぶりが実は不安で仕方なかったと明かす。
 「みんないいキャラしてるけど、なにせ芝居ができない(笑)。でも一カ月半の間に顔つきも変わったし、いい感じで地に足が着いていった。順撮り(シナリオにあるシーンの順番通り撮影していく方法)で撮影したので、大人に混じって成長していく彼らの姿が形として記録されています」

 とはいえ微妙な年ごろだけに、そうしたダメっぷりをなかなか人前ではさらけ出さないものだ。
 「最初は彼らも“おっぱい”と口に出せなかった。それじゃダメだと。イタリア語の“チャオ”みたいに全員あいさつで“おっぱい”って言おうと決めたんです。すると彼ら、綾瀬さんにも“おはようおっぱい!”とか言っていいのか? って聞いてきたから、あいさつだから当然だと。そしたら今度は逆に調子に乗ってきて(笑)」

 撮影で苦労した点を尋ねると「何もない」という答えが返ってきた。
 「撮影中に苦い思いをしても振り返ればいい思い出だった…みたいな経験は過去にもあるけど、それすらありませんでした。子供たちの夏休みが終わる8月31日にクランクアップしたんですが、むしろ“これでお別れかぁ”と寂しかったほど。祭りが終わった…みたいな感じかな。この夏は二度と来ない。だからこそ綾瀬さんも子供たちも撮影を楽しもうというところがありました。そうした雰囲気がフィルムの中に醸し出されているように思えますね」

 79年という時代を表すのに重要な役割を担っているのが音楽。すべて往時のヒット曲で、どれも監督自身が選曲した。
 「アラフォー世代にはドンピシャですが、20代の若い子たちにとっては懐メロ。そうした若い子が聞いてもいいなと思える曲を選びました」

 エンディングで流れるのはフィンガー5の「個人授業」。歌っているのはELTの持田香織とオリジナル・ラヴの田島貴男によるスペシャルユニット“CaoCao”だ。
 「見終えたとき79年から現在に戻るタイムトンネル的な役割を果たせるような、明るい感じの曲で締めたかったんです。それに作品が年上の女性からの目線で作られているので、ここに子供からの目線も入れたいなと」

 最後に、「おっぱいバレー」というタイトルゆえに鑑賞をためらっている方へのメッセージで締めくくってもらった。
 「ちょっと見るのが恥ずかしい、チケットを買いにくいという方も多いと思います。でも、勇気を持って見ていただければ(笑)、スッキリ元気になります。恋人や同僚を誘って、ぜひご覧ください。タイトルとは裏腹のさわやかな内容だけに、逆に“いいセンスしてる”って誉められるかも知れませんよ(笑)」

プロフィール
はすみ えいいちろう
1967年3月29日、千葉県生まれ。ROBOT映画部に在籍。数多くのドラマで演出補を務めた後、映画「踊る大捜査線 THE MOVIE」「スペーストラベラーズ」に助監督や監督補として参加。04年「海猿」で劇場映画監督デビュー。05年に自らの企画として「逆境ナイン」を監督。06年「LIMIT OF LOVE 海猿」が実写邦画ナンバーワンヒットを記録。08年「銀色のシーズン」がヒット。

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