「いろいろと巨人も気を遣うところがあったんでしょう」(スポーツ紙記者)
今季は坂本にとっては不本意なシーズンだったはず。7月には左脇腹を痛め、約1か月も戦線を離脱した。また、昨季まで2年連続で選ばれていたセ・リーグ遊撃手部門のゴールデン・グラブ賞を広島・田中に奪われた。打率こそ、自己最高打率の3割4分5厘だが、チームも優勝を逃しており、ダウン提示を受けたとしても反論できなかったはずだ。
それでも、1億5000万円もの大幅増となったのは、一連の大幅補強が関係しているようだ。
「丸佳浩に『5年25億円超』を提示し、炭谷にも1億円以上の年俸を約束しました。優勝できなかったシーズンはたとえ昇給対象の選手であっても、大幅増は見込めません。ですが、外部補強の外様に大盤振る舞いをし、生え抜きの年俸を下げたとなれば、チーム全体の士気にも影響してきますので」(球界関係者)
5億円は巨人野手史上3番目に高い年俸となる。松井秀喜氏の6億1000万円、阿部慎之助の6億円(=14年年俸)に次ぐもので、坂本は「球団史に残る顔」ということになる。今回の契約更改がどれだけ価値のあるものか、坂本自身も分かっているはずだ。
セ・リーグ出身のプロ野球解説者がこう続ける。
「オールスターゲームのセ・リーグベンチを仕切っているのは坂本です。性格的にも人を引っ張る力があるので、その坂本がヘソを曲げたとなれば、巨人の悪評は他11球団にも広がったでしょう」
また、内海哲也投手(36)にも現状維持の1億円が掲示されたという。やはり、生え抜きのメンツ、ベテランたる選手の影響力に配慮したのだろう。
「坂本は来季が正念場となります。巨人はドラフトで根尾(昂=中日入り/大阪桐蔭)を入札しました。根尾獲得に失敗した後、2位で高校生内野手の増田陸(明秀日立)を指名したように、遊撃手・坂本の後継者を急いでいるからです。7月の故障離脱にしても、『経年劣化』という見方がされています」(前出・プロ野球解説者)
巨人内にはこんな声も出ている。ポスト坂本だが、「吉川尚輝をコンバートすれば、済むこと」。吉川尚も16年ドラフト当時、大学球界屈指の好遊撃手と評されていた。チームの都合でセカンドを守っているが、入団当初は「遊撃・吉川尚、三塁・坂本案」も囁かれていた。今季は故障で後半戦を棒に振ったが、成長著しい有望株である。坂本はショートのポジションに愛着が強い。今、踏ん張らなければ不本意なコンバートを強要されるだけだ。
「原辰徳監督(60)は12人もの選手の背番号を変更させました。降格の選手もいましたが、奮起を促すためです」(前出・スポーツ紙記者)
昇給の対象になり得なかった中堅が、主に背番号変更となった。また、背番号が降格した選手に対し、自ら檄を飛ばしていたそうだ。ここまで苦慮しなければならないようなら、最初から大型補強なんかやらなければよかったのに…。そんなふうに捉えたファンも少なくないのでは?(金額は全て推定、スポーツライター・飯山満)