「国家主席就任が確実視された'12年8月には、習氏が出席予定の共産党指導部の会議室から時限爆弾が発見され、前後には毒殺未遂事件も起きている。まさに暗殺計画はこれまでにも、スレスレで回避されてきたと言えるのです」
一説には、こうした暗殺未遂事件の多くは、江沢民元国家主席の流れを酌む周永康前政治局常務委員が指示していたともいわれてきた。その同氏が昨年12月に収賄罪で摘発されたことから、一時はこの動きも鳴りを潜めるかとも見られたが、実情は全く逆の様相を呈しているのだ。
「軍部とは別に、共産党内にも粛清された江沢民一派や胡錦濤一派の怨念が渦巻いている。汚職撲滅を掲げ、政敵を次々と殲滅している習氏が、出身派閥ともいえる太子党官僚の汚職にフタをし続けているからなのです。そのため、党内には『徐氏は病死ではなく暗殺された』『今こそ正義の知略(クーデター)を振るうべきだ』との声が渦巻いているのです」(前出・CIA筋関係者)
もっとも、習氏もこうした動きは織り込み済み。自らの危険を回避するために、ここにきて急速に身辺警護を強めているという。
前出の特派記者がこう明かす。
「習氏は昨年暮れから年明けにかけて警護隊の大幅な人事刷新を行い、腹心部隊で固めたのです。その筆頭が北京軍区全体の統括トップに任命された宋普選氏。また、北京軍区の中でも習主席や党幹部らが居住する中南海を護る司令塔に藩良時氏、中南海警備部隊のトップに王寧氏を就任させた。さらに北京管区の武装人民警察のトップに王建平氏を任命。これら重要ポストの大半は、習氏が中国トップに上り詰めるきっかけとなった浙江省共産党委書記時代の腹心ばかりなのです」
また、習氏の過剰な自衛ぶりはこれだけではない。この3月には、中南海と「全国人民代表大会」の特別警護を任務とする党中央弁公庁警衛局のトップである曹清局長を、いきなり解任。副局長を後継に就任させたほどなのだ。
「実は、この突然の人事刷新の裏には、警備局内で画策されたクーデターが発覚したためともいわれている。曹氏がこれに関与していたかは判然としないが、今では習主席は党や警察、軍の幹部らに強い不信感を抱いており、食事の際には毒見をさせているとの噂も噴出している。また、地方視察の際にも当日に警備陣の総入れ替えをしたり、移動ルートの変更も少なくないのです。そのため、さらなる危険を冒してでも、軍部の掌握に手を付けたと見られている。習氏にしてみれば政敵の排除は、もはや戦争と同じなのです」(前出・中国軍に詳しい事情通)
もしもこれが事実なら、攻防戦はまだまだ続くはず。習近平主席が“返り血”を浴びる日は、そう遠くなさそうだ。