工藤公康監督(51)は「何も心配していない」と、松坂評を聞く報道陣に笑顔を返していたが、4日の阪神戦に続き、10日の巨人戦でも変化球を多投。かつての速球とスライダーで三振の山を築いた姿はどこへやらといった投球スタイルだった。対戦した側の阪神と巨人も違和感を感じたようだ。
「毎回のように走者を背負い、勝負球は変化球ばかり。カーブ、スライダー、チェンジアップ…。対戦打者の打ち気を外す投球しかできなかった」(関係者)
阪神戦のネット裏にはパ・リーグ5球団のスコアラーも陣取っていたが、松坂に「平成の怪物と呼ばれていたころの輝きはない」と判断したという。
「ソフトバンクの選手、首脳陣、スタッフも『昔の松坂ではない』と感じています。味方なので彼らは口に出さないだけ。松坂に教えを乞う若手は一人もいませんし」(同)
同じメジャーリーグ帰還者でも、黒田博樹(40)との大違いだ。広島カープの若手や中堅選手は黒田の周りに集まり、配球術や変化球などの技術面から、コンディション作り、登板前の精神面といったところまでもアドバイスを求めて止まない。「練習中の様子を見るだけでも勉強になる」との賛辞もあり、広島は“黒田効果”による開幕ダッシュも夢ではない。
「ソフトバンクの首脳陣もそんな松坂に配慮し、松坂と同じ練習をする組に若手を入れるなどし、コミュニケーションが取りやすい環境作りを務めています。松坂は性格も明るく、いい先輩かもしれませんが、それ以上でもそれ以下でもありません」(ベテラン記者)
王貞治会長は常に前向きの発言をし、松坂が結果を出すことに期待しているが、工藤監督や投手陣を預かる佐藤義則コーチ(60)は、ある意味で残酷だ。松坂はマイペース調整を許されているが、結果を出せなかったときに松坂には言い訳の余地がない。
「開幕1カ月は先発ローテーションに入れ、そこでたとえ勝ったとしても、投球内容が悪ければ二軍落ちでしょう。松坂の猶予は交流戦が始まるまで」(同)
松坂はメジャーリーグ特有の固いマウンドや、投球練習にも球数制限があるアメリカ式に適応できず、投球フォームを崩してしまった。本人もそれを分かっていて、修正しようとしているものの、投球フォームはぎくしゃくしたままだ。また松坂は、本来は速球派投手だった。変化球のレパートリーは豊富だが、「スライダー以外は平均点」というのがプロ野球解説者の評価で、技術的に伝えられるものも多くない。若手投手からすれば、いまの松坂から学ぶものは何もないということになる。
「バント処理、牽制の速さなどの守備は天下一品。もっとも、いまはそれを発揮する場面がないが」(プロ野球解説者)
松坂から若手に話し掛けることも多々ある。関係は良好だが、黒田のように尊敬の眼差しを得られる存在ではない。公式戦初登板は開幕後2節目のオリックス戦が予想されているが、相手は超の付く大型補強に成功した強力打線だ。
ファンとマスコミの関心は確かに高い。だが、変化球頼みの苦しい投球しか出来ない松坂にとって、その関心の高さは辛いものになりそうだ。