記者世代のバレエ少女(だった頃の話)なら誰でも憧れた、森下洋子は日本バレリーナ界のカリスマ。その繊細なバレエ・センスと共に、身体的な“才能”にも恵まれている。小柄な体系(身長150センチ、体重38キロ)にも関わらず、手足が長くて「大きい」。年齢を重ねても美少女に見える顔立ちなど、バレエ作品のすべてに於いて求められる可憐な美しさを表現できる森下は、世界中にファンを持つ。発育が良くなり、体系が欧米化してしまった現代の日本女性では、もうこのタイプのバレリーナは生まれないと言われていて、森下と相手役でもあり夫でもある清水哲太郎との間には子供がなく、どうも残念な事にDNA的に森下洋子のバレエを継承できる人はいないようだ。
そんな森下洋子は、還暦を過ぎた今でもバレエを踊るためにステージに立つ。世界中でこの年齢まで踊り続けるバレリーナはそういない。バレエ1作品のプリマをワンステージ踊る事は、とてつも無くハードだからだ。フィギュア・スケート同様の高速スピンやジャンプなどを毎回成功させなければならないので、言うなればバレリーナは、公演の度にオリンピックで金をとるようなもの。華奢な森下は体力の温存の為、舞台そでに布団を敷き、出番の無い幕間では横になって体を休めている。年に数回の公演を成功させるためには毎日の練習は絶対にかかせず、365日、練習をサボる事はないという森下洋子。なぜに、ここまで頑張らなければならないのか。
松山バレエ団はどこかの王子がやってる“ギラギラバレエ団”とちがい、古典バレエの芸術性を壊さない様に、少しずつコツコツと新しい演出を重ね成長している。バレエ芸術には終わりが無い。松山バレエ団のバレエは魅せると同時に「引き継ぐ」という使命があり、その責任は重大だ。正式名称を「財団法人松山バレエ団」というが、性質上バレエ団は一般的なメディアへの広告や、露出が少ないので話題に上りにくい。草刈民代も言っていた、「名前の知られている自分が踊り続けるのはバレエ発展の為」なのである。
あと何年森下洋子のバレエを見る事ができるかわからないが、年に数回しか行われないとにかく貴重な松山バレエ団の公演。GW中は東京で集中して公演がある。ぜひ一度は見てほしい。(コアラみどり)