「昨年末、野球・ソフトは東京五輪組織委員会に競技復活の要望書を出しています。その中身を12球団も読んでいるのかどうか…。目を通したとすれば、巨人は野球復活のために犠牲になる覚悟を決めたことになりますが」(JOC関係者)
野球・ソフトのほかに、スカッシュ、空手、ボウリング、綱引き、ダンスなどの競技団体も立候補している。当選を勝ち取るためのポイントは、まず世界規模での競技普及率、競技人口の多さが審議される。そして、もっとも重要とされるのは予算だ。協議を行う上で、低コストで実施できるかどうかが当落を分けるという。先のJOC関係者によれば、野球・ソフトボールは<東京ドームは−−略−−天候に左右されずに開催できる都内唯一の球場>と要望書に記したそうだ。
既存球場を利用すれば、新たに野球場を建設する手間と予算が省ける。東京ドームなら、7、8月の雨天対策も万全だ。五輪組織委員会には「企業広告のある民間経営球場を使用するのは、いかがなものか?」という意見もあるそうだが、多大なるメリットがあることは事実だ。しかし、そうなると、同球場を本拠地とする巨人は、2020年7月24日の東京五輪開幕と同時に、約1カ月の長期ロードを強いられることになる。
『長期ロード』と言えば、夏の甲子園大会で犠牲になる阪神が思い出されるが、負担はその比ではない。東京五輪はその名の通り、東京中が競技会場となる。各オリンピック競技との兼ね合いで、大田スタジアムや二軍のジャイアンツ球場を“臨時本拠地”とするのも難しいだろう。この時期に地方遠征の連続となれば、年間集客数でも大きな打撃を受けるのは確実だ。
「夏はプロ野球に限らず、プロスポーツ団体にとってかき入れ時です。この時期、日本ハム、楽天、西武なども東京ドームで主催ゲームを行ったことがあるように、都心の一等地にある同球場は“カネの成る木”なんです」(ベテラン記者)
野球が最後に行われた北京五輪は、上位8チームが本大会を戦い、決勝トーナメント終了まで計8日間を要した。ここに準備期間を加え、約2週間というのが予想される日程だが、ソフトボールもある。単純計算でも東京ドームの使用期間は2倍の1カ月ということになる。
1月8日に巨人の白石興二郎オーナー(68)は記者懇親会の席上で、野球・ソフトボールの復活についても触れ、こう語っていた。
「我々も(競技復活を)組織委員会にお願いして、明るい方向が見えつつある。野球振興の大きな励みになる」
トバッチリの長期ロードを強いられるとはいえ、プロ野球界の将来のため、背に腹は代えられないというわけか…。球界のドン、ナベツネこと渡辺恒雄巨人会長も、この件に関しては何も喋っていない。仮に「五輪に民間経営の球場を利用すべきではない」との正論を言ったとしても、五輪で盛り上がる世論を敵に回すのは必至。野球・ソフトボールの五輪復活のため、巨人は犠牲になるしかないようだ。