第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が始まった。過去3大会で2度の優勝を誇る侍ジャパンには、一次、二次予選突破はもちろん、「決勝ラウンドに進出して当たり前」という高い期待が寄せられていた。しかし、福岡ソフトバンクとの強化試合で敗れたのを皮切りに、「現代表は史上最弱」の声まで聞かれるようになった。
「前大会は『日本人メジャーリーガーなし』でしたし、今回もメンバーは決して悪くない」(ベテラン記者)
では、小久保裕紀監督(45)の采配に問題があるのか…。球界のご意見番H氏が日曜朝の情報番組で「選手を不安にさせる采配はダメ」と指摘したが、日本野球機構(NPB)内部の見解は少し違う。小久保監督の若さが指摘されていた。
「小久保監督は選手に遠慮しているのかもしれません。各チームの看板選手やリーグを代表するスターばかりが集まっているので、当然、彼らのメンツにも配慮しなければならない。打撃面で調整が遅れている選手、外国人投手特有の動くボールに適応しきれていない選手は、短期決戦である以上、スタメンから外さなければならない。その見切りの遅れは投手継投にも感じられます」(球界関係者)
そこで“後任”に急浮上してきた人物がいる。前中日ゼネラルマネージャー職の落合博満氏(63)である。
「WBCが終わった後、3年半後のオリンピックを見据え、監督人事を含めて、新しい体制作りをする」
これは、1月のNPBの仕事始めで、熊崎勝彦コミッショナーから出た言葉だ。額面通りに受け取れば、世界一を奪還しても、NPBは新体制でこの先の国際試合を戦っていくことになる。
「第5回大会の前に、2020年の東京五輪があります。東京五輪は特別なイベントなので、常設侍ジャパンの監督が必ずしも指揮を執るとは決まっていません。アマチュア、学生との混合チームになる可能性も出てきたので、そのへんは曖昧にしておきたい。ただ、日本中が納得する実績のある人、期待感を持てるOBから選出する予定です」(前出・関係者)
WBCで指揮した経験を持つ原辰徳氏(58)、DeNAを再建させた中畑清氏(63)が、次期代表監督の有力候補と伝えられてきた。一方、小久保監督は「若さ」で苦しんだ。12球団を見渡せば、40代の指揮官は珍しくないが、ペナントレースと短期決戦の国際試合は異なる。代表選手と現役時代の重なるアニキ的存在では、選手交代の面でドライになりきれない。
「ある程度、年齢の高い人の方が言葉に説得力も出るし、実績があれば選手も納得します」(同)
円熟期の年齢で、高い実績を持つOB。落合氏はその点では最適任者かもしれない。GMでは失敗したが、8年間の監督生活でチームを4度のリーグ優勝と日本一1回に導いている。日本球界史上唯一の3度の三冠王に「交代」を告げられても、誰も反論しないだろう。
「監督・落合の采配は選手任せでもありました。でも、選手は任されるまでに成長しないと使ってもらえない。専門外のことには口を挟まず、森繁和コーチ(当時)に投手起用の全権を託したのは有名です。奇抜な作戦を用いるのではなく、何をやったら相手がいちばん嫌がるかを考えていた」(ベテラン記者)
また、審判団も監督・落合には一目置いていた。日本シリーズ前、日程問題や当時、パ・リーグのみが行っていた予告先発制などのリーグ間で異なるルールを摺り合わせる際、落合監督は論客として君臨していた。しかし、それだけではない。
「落合氏がマウンドに行くときですよ。スピーディーな試合進行のため、マウンド場での話し合いが長くなると、球審が注意を促します。でも、落合氏はマウンドからベンチに帰るときも、ゆっくりした歩調を変えようとしませんでした。監督がマウンドに行く目的の大半は投手交代か、間合いを取らせるためです。後者のとき、必要な時間はインサイドワークを使ってでも、しっかりと稼いでいました」(NPBスタッフの1人)
監督・落合が「代表チームも指揮できる」と関係者を唸らせた投手起用もあった。'08年北京五輪直後だった。中日から代表入りした岩瀬仁紀はシーズン中とは別人で、大会3試合で10失点と散々な結果だった。当時、このショックは帰国後のペナントレースに影響するとも思われたが、結果はNPB初の10年連続50試合登板を達成。監督・落合は「使い方を間違わなければ」と言い、この適材適所に選手を使うオレ流采配は、当時の代表監督だった星野仙一氏を暗に非難する結果ともなった。
小久保監督が決勝ラウンドでしくじるようなことになれば、年長者の監督登用論はさらに強まってくる。
「第2回大会で原氏が代表監督を務めましたが、落合氏も候補として名前が出た1人なんです」(同)