巨人は日本ハムとの間で、左のセットアッパー、乾真大を獲得する交換トレードを成立させたが、補強はまだまだ続く。一連の賭博事件で巨人は4人の投手を失った。高橋由伸監督(41)の構想に入っていた左のリリーバー・高木京介の喪失は特に痛かった(1年間の失格処分、後に契約解除)。
「計算に入っていたドラフト1位の桜井俊貴がつるべ打ちに遭い、即二軍落ち。一軍昇格が遅れるようであれば、先発が務まる投手をトレード補強しなければなりません。打線も、ギャレットが心配のタネです。マジメな性格なので不振になると考え込んでしまうので」(球界関係者)
そこで着目されたのが、巨大戦力を誇る福岡ソフトバンクホークスだ。
「長谷川勇也のように、首位打者のタイトルを獲得しても('13年)レギュラーが確約されない選手もいます。育成の三軍選手にしても、他球団の二軍に引けを取りません。他球団ならレギュラーを張れる選手がゴマンといる」(スポーツ紙記者)
巨人はそのホークスとの“ホットライン”を持っている。球団事務所の電話からホークスに、「短縮ダイヤルでつながっている」という話もあるくらいだ。
「両球団内で成立したトレード、コーチの交換にしても、本人よりも先に球団スタッフが知っていたこともありました」(同)
また、ホークスの王貞治球団会長は巨人OB会長職を退いてはいるが、親密さは変わっていない。巨人側がトレードを持ち込めば前向きに対応してくれるはず。
「元ホークス選手は総じてレベルが高い。亀澤恭平は中日でレギュラーを獲り、巨人でも立岡宗一郎が外野の一角を奪いました。ヤクルトでもホークス二軍で鬱積していた山中浩史がローテーション入りしており、新垣渚もホークス出身。ホークス選手は“チャンスがあるならば他球団でも”の心境です」(同)
各球団は「ホークス側から近く仕掛けてくる」と見ている。去る4月20日、松坂大輔が二軍戦に登板した。日本球界復帰後、初の公式戦先発。2回被安打4、失点2で、「一軍登板は程遠い」との声も聞かれたが、実際は違う。
通用するか、否かを判断するのは工藤公康監督(53)だからだ。
「二軍首脳陣が“松坂復活”の件で託されたのは実戦登板できたか、どうかだけ。通用するかどうか、どう使っていくかを決めるのは、あくまでも工藤監督です。松坂は王会長が孫正義オーナーに直談判し、3年12億円も投資して獲得した経緯もある。投げられるのならば、近く一軍で使わざるを得ない」(前出・球界関係者)
松坂が工藤監督の前で投げることになれば、巨大戦力の有能な一軍投手の誰かが弾き出される。同様に、昨秋のドラフト1位・高橋純平に関して、「今季後半に一軍デビューする」との情報もある。松坂だけではなく、高橋も一軍に上がるとなれば、弾き出される投手は増える。巨人以外のセ・リーグ各球団もこうした推移を見守っているのだ。
「近年のトレードには特徴があって、東日本大震災以降、各球団は移籍選手の生活にも配慮しています。ホークスと交換トレードとなれば、九州全般に広まりつつある震災の影響もくんであげるはず。そのあたりは当該球団で話し合うことになるでしょう」(同)
ヘンなジンクスもある。
「千葉ロッテでは『家を買った、建てたばかり』の選手が移籍するケースが続いています。今江敏晃は家を建てたら、FA宣言せざるを得ない低評価を突き付けられました。また、西武ライオンズにいた帆足和幸投手(現ホークス打撃投手)は東日本大震災が起きた直後、家族を転居させました。『子どもの進学が…』と言っていましたが、同年FA宣言してホークスに移籍しました」(ベテラン記者)
由伸巨人がホークスの若手を狙うとしたら、選手を九州に行かせない金銭トレードになりそうだ。工藤監督も、「選手のチャンスが広がるのなら」との思いから反対しないだろう。
「最下位に低迷するDeNAもホークスの巨大戦力に目を付けています。高田繁GMは王会長とも親しく、工藤監督には『初代指揮官』の交渉をした経緯があります。阪神も同様で、若手登用で好スタートを切ったものの、『タマ切れ』の感が漂っています。阪神はいろいろな球団にトレードを申し込みましたが、相手側が『欲しい選手がいない』とし、相手にされませんでした。でも、今年は金本知憲監督によって若手が成長しているので対応も変わってくるはずです」(同)
巨大戦力のホークスであえてウイークポイントを挙げるとすれば、捕手だろう。若手の山下斐紹などが出てきたが、「打撃優先」の選手である。細川亨、鶴岡慎也の両ベテランにはこれ以上の上積みを求めるのは無理。山下と世代的にかぶらない20代後半から30代前半の捕手ならば、「ホークス側がサービスしてくる」との見方もされている。
セ球団の優勝への近道は「ホークスと仲よくすること」かもしれない。