「前走の根岸Sの前に顔面神経痛になってしまってね。今でもまだマヒが残っているほど。正直、この前でもよく勝ってくれたし、ここまできたのが奇跡だよ。本当によく立ち直ってくれた」と白井調教師は笑みを浮かべた。
その根岸Sは昨年夏のエルムS以来、4カ月半ぶりの実戦だった。だが、力強く3番手を進んだフェラーリは、直線でも末脚が衰えることはなかった。後方から追い込んだヒシカツリーダーをクビ差抑え込んだ。
その勝負強さに、多くの名馬の背中を知る鞍上の岩田騎手も目を見張った。「あれだけの休み明けで勝つんだから、やっぱり力がありますね。さすがにいい根性をしている」と能力を再認識したようだ。
この勝利は、競馬場で、あるいはテレビでレースを見守ったファンにも力強いメッセージを発信した。白井師のもとにはレース後、手紙が届いたという。
「顔面神経痛で苦しんでいた方から勇気をもらったという手紙をいただいた。次も頑張らないといけないね」
中間は反動もなく順調に乗り込まれている。「間隔が詰まっているし、東京への輸送もあるから、1週前は15-15程度で十分。調子はすごくいい」と調整にブレはない。
ダイワスカーレットの電撃引退はあったものの、それでもカネヒキリ、ヴァーミリアンと敵は強力だ。それでもトレーナーは「千四からマイルまでなら大崩れなくきっちり走ってくれる。相手は強いけど、十分期待を持てると思うよ」と口元を引き締めた。2002年のアグネスデジタル、05年のメイショウボーラー以来、3度目のVを視野に入れている。
岩田も言う。「今回はこれ以上ないほど相手がそろった。だけど、引くつもりはない。勝利を信じて勝つ競馬をする」と言い切った。
先行抜け出し。自分のスタイルで王座交代を見据えている。