「脱水症」は夏によく聞く言葉だが、冬でも起きることが多い。空気が乾燥しているため、室内でも長く過ごすと、目や口、皮膚から想像以上に水分が排出され、不足してしまうと専門家は指摘する。今年も感染者が多く死亡者も出た、ノロウイルスなどの対策としても、冬の水分補給は大切だという。
冬場は水分を摂る機会が減りがちだ。しかし、前出の医療関係者は「夏と同じように、こまめな水分補給が必要です」と言う。夏に比べ、冬は確かに汗をかく量は少なくなるが、水分は皮膚や呼気からも排出されているのだ。
その量は成人の場合、1日に体重1キログラムあたり20ミリリットル(乳幼児は25〜50ミリリットル)。体重60キロだと、何もしないでいても、1日1200ミリリットルほどの水分が出ていく計算になり、空気が乾燥していれば、さらに増えることになる。
「脱水症」は単なる“水の不足”ではない。医学的な言い方をすれば、「人の体にとって不可欠な体液が不足した状態を脱水症」というのだそうだ。これはもはや、立派な病気である。
総合医療クリニック院長の久富茂樹医学博士はこう説明する。
「よく誤解されるのは、脱水症は単に水不足をいうのではないという事です。脱水症は体液も同時に失われた状態ですから、水分だけではなく、電解質も同時に失われる状態を指します。わかりやすく言えば塩分も失う(脱塩水症)のです」
つまり、人の生命維持にとって需要な成分を失うため、当然体にさまざまなトラブルが起きるわけだ。血液の量が減ってしまい、血圧が下がると、肝臓や消化器といった肝機能の臓器の働きも鈍り、体に必要な栄養素を配ったり、不要な老廃物排泄したりする能力もダウンしてしまう。
「そうなると脳の血流も減るわけですから、集中力が欠け、消化管の血流が減るために食欲も不振まで起きてしまいます」
と、久富院長。他に神経や筋肉に悪い影響が出て、足がつったり、シビレなども引き起こすことになる。
「たかが脱水症」といっても、これだけの変調が体に起きるとなると、甘い考えも吹っ飛んでしまうだろう。