11月20日配信記事でも触れた内容だが、先場所貴景勝は小結で9勝をマークしており、今場所の13勝と合わせると合計22勝。「三役で直近3場所33勝」という大関昇進目安を考えると、来場所は大関取りとなってもおかしくはないところだった。
しかし、各メディアの報道を総合すると、昇進を預かる審判部は現時点で「1月場所が大関取りの場所になる」という見解はしておらず、日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)も「来場所好成績で大関候補」という旨の認識を示している。前述の条件はあくまで“目安”で、全ては来場所蓋を開けてみてからというのが協会側の考えであるようだ。
一見すると挑戦に値する成績を残しているのに、なぜ大関取りの機運が高まらないのか。人によって様々な意見があるだろうが、筆者は関脇御嶽海も原因の1つではないかと考えている。
「13勝2敗」の成績で7月場所を制した御嶽海は、小結として臨んだ5月場所で「9勝6敗」をマーク。2場所合わせて22勝を挙げたことで、9月場所は11勝以上で大関取りとなった。ただ、7月場所は3横綱1大関が休場(途中休場含む)していたこともあり、昇進には数字だけでなく内容も求められていた。
しかし迎えた9月場所、御嶽海は「9勝6敗」と11勝に届かず、3横綱1大関に敗戦と内容も振るわなかったことで大関取りに失敗。さらに、ごくわずかに可能性が残されていた今場所では「7勝8敗」とまさかの負け越しを喫し、大関取りは完全に消滅してしまった。
御嶽海と貴景勝の間には“起点の場所が小結で9勝6敗”、“3横綱1大関休場(途中休場含む)の場所で13勝2敗の優勝”、“11勝以上で昇進目安クリア”といった少なくない共通点がある。こうした事柄を考えると、協会側が昇進に厳しい姿勢を打ち出すのも致し方ないといえるのではないだろうか。
文 / 柴田雅人