今年7月の参院選広島選挙区で初当選した妻の案里氏(46)の陣営が、ウグイス嬢に法定上限を超える3万円の日当を払っていたとする「運動員買収疑惑」を受けてのスピード辞任だった。
同日発売の『週刊文春』が報じた疑惑に対し、克行氏は「私も妻もあずかり知らない」としたが、「疑義が生じたこと自体、法の番人として国民の信頼に耐えうるものではない」と辞任の理由を説明した。
政治部記者が語る。
「案里氏の選挙では、克行氏が選対本部に入り、金銭の出入りから選挙活動の一切を取り仕切りました。弁明を額面通りには受け取りがたい」
克行氏は慶応大学卒業後、松下政経塾から広島県議を経て1996年の衆院選で初当選。同期の菅官房長官とは密接な間柄で知られる。
「菅さんを“ガースー”とあだ名で呼べるほどの仲で、勉強会を頻繁に共催していたほど。初入閣にあたっても、菅さんの強力な推挙がありました。今回の報道では、菅さんがかばうのではないかとみられていましたが…」(自民党関係者)
同じ慶応大学出身だった妻の案里氏とは、克行氏が落選中に知り合い、2001年に橋本龍太郎元首相を仲人として結婚した。
その後、案里氏も、宮崎県の出身ながら克行氏のバックアップを受けて’03年に広島県議に初当選。上昇志向が強く、’09年には36歳という若さで広島県知事選に出馬するもダブルスコアで敗北。その後、県議に出戻っていた。
「漢字表記は違いますが、同名のAV女優がいたほどで、名前の響きと容姿がかわいいため、県議時代から目立つ存在でした。夏場はノースリーブが多く、男性の議員や県職員を悩殺していましたよ。ただし、性格は真逆で向こう気が強く、知事選で敗れた湯崎英彦知事には常に敵意をむき出しにして、議場で当たり散らしていた」(地元記者)
今回のような運動員の買収は、実際には慣例化されていると言っても過言ではないが、立件されたケースもある。
6年前の参院選では、小沢一郎氏が当時率いた生活の党から出馬して落選した広野允士元参院議員の陣営が、ウグイス嬢に3万円の日当を払っていたことが発覚。当時の公設第一秘書が逮捕されて有罪判決を受けたことで広野氏も連座制が適用され、5年間にわたって地元選挙区から出馬が禁じられたのである。
捜査当局の出方次第では、案里氏はもちろん、克行氏の責任までも問われ、議員失職や立件の可能性も浮上する。
「そうした最悪の事態を見据えて、早めに辞表を書かせたのは間違いない。法相ということで、韓国の“タマネギ男”こと曺国氏に関連付けられてバッシングがヒートアップするのを回避したという側面もありますが、河井夫婦は何かと目立つ存在ですから、カネなどが絡んだ二の矢、三の矢のスキャンダル報道が出てくる前に辞任させたのです」(前出・自民党関係者)
目立つといえば、辞任ドミノの先陣を切った菅原一秀前経産相(57=衆院東京9区)も負けていない。
「学生時代にTRFのSAMとダンスチームを組んでいたというのが自慢で、何かとダンスを披露したがる。とにかく目立ちたがり屋で、『早稲田実業で甲子園に4度出場』とPRしていましたが、実際は“アルプススタンドで3度応援していただけ”というイタい人物です」(地元関係者)
菅原氏のクビをとったのも『週刊文春』。秘書給与のピンハネや後援会関係者へのメロンやカニのばらまき疑惑の渦中に、公設秘書が有権者に香典を渡していたことまで明るみとなり、10月25日に辞任に至った。
「’09年にも支援者へのメロンのばらまきが報じられ、’16年には元交際相手が告発。『子供を産んだら女じゃない』とか『25歳以上は女じゃない』といった女性蔑視発言や、国会をサボって同伴でハワイ旅行に行っていたことなどを洗いざらいぶちまけられたこともありますよ」(同)
以前から醜聞まみれだった菅原氏が入閣できたのも、菅官房長官のおかげ。菅原氏の父親と、菅官房長官が秋田県の高校で同窓ということもあり、特に目をかけられているのは永田町界隈では有名な話だ。
「菅原氏は、菅さんを次期首相に担ぎ上げるための勉強会である『令和の会』の立ち上げを担い、菅グループを実質切り盛りしている最側近。菅さんのような大物には尻尾を振りますが、秘書への暴言やパワハラがひどく、いままで数十人近くが菅原事務所を辞めています。そんな人を菅さんは長年かわいがり、今回もかばおうとしていました」(前出・自民党関係者)
内閣改造当初、河井氏、菅原氏と並んで“菅派三大臣”と称された小泉進次郎環境相(38)も、発言が空疎で内容が伴わないとして「ポエム」と揶揄され、国連気候行動サミットでの「セクシー」発言で一気にバッシングの対象となった。
「資産公開で妻の滝川クリステルが2億9000万円も貯め込んでいたことが公になると、公表システムが閣僚の不正蓄財防止のため必要不可欠な措置であるのに、『ルールではあるが、率直に申し訳ない』などと発言。政治家としてのモラルが決定的に欠けていることを露呈しました」(前出・政治部記者)
★手段を選ばぬ“全面抗争”
菅官房長官のプッシュで入閣した3人が漏れなく問題児であることが明らかになり、党内での求心力の低下も著しいという。なぜ、“菅チルドレン”ばかりが狙われるのか。
「ポスト安倍の筆頭格である菅官房長官の勢いを削ぎたいと考える勢力が、一連のスキャンダル報道を仕掛けたと囁かれています。4選を水面下で狙っている安倍晋三首相や、かねてから折り合いが悪い麻生太郎財務相なども名前が挙がっていますが、リーク元として最も有力なのは岸田文雄政調会長率いる岸田派による謀略説です」(同)
岸田派は、今夏の参院選で4人の現職議員が落選した。そのうちの1人が、広島選挙区で案里氏に敗れた溝手顕正氏(77)だ。
これまで広島選挙区は、2議席を溝手氏と野党候補が分け合うかたちだったが、今回は官邸の強い意向で案里氏を追加で擁立。自民の票が分散することとなり、溝手氏は5期死守した議席を失った。
「溝手氏は安倍首相に批判的な主張が目立っていたことから、官邸が案里氏を擁立し、溝手氏を放り出したのです。このため、溝手氏サイドは今も腹に据えかねている。岸田さんも“選挙に弱いリーダー”という烙印が押され、特に菅官房長官への恨みは強い。河井夫婦の公選法違反疑惑で案里氏を議員辞職に追い込み、溝手氏が補選に出馬して議員に返り咲くという絵図を描いているのかもしれません。岸田さんも地元は広島なので、子飼いの県議・市議は多い。河井夫婦のネタは、まだまだいくらでも入る状況です」(同)
このままでは「菅官房長官に近づくと狙い撃ちされる」という空気になり、菅グループの結束にも影響が出る。
そもそも、所属の派閥がありながら、次代の勝ち馬に乗ろうという議員の寄せ集めが菅グループの実態だけに、一気に瓦解する恐れもあるのだ。
こうした“菅包囲網”に対し、当の菅官房長官は「俺に仕掛けてくるなら、こっちも手段を選ばないぞ」と全面抗争も辞さない覚悟だという。
「困っているのは安倍さんだ。菅さんは各省庁に子飼いの官僚がいるし、内調(内閣情報調査室)をしっかりと抱き込んでいるので、あらゆる情報が入りやすい。スキャンダル合戦になれば政権のレームダックにつながるし、これ以上、菅さんの存在感が強まると自身の4選も危うくなるからな」(永田町関係者)
足の引っ張り合いにリーク合戦と、疑心暗鬼渦巻く官邸。次は「誰が背中から撃たれる」のか――。