東京公演のほか、大阪公演(9月5日 なんばグランド花月)、那覇公演(11月6日&7日 琉球新報ホール)、石垣公演(11月28日 石垣市民会館大ホール)に加え、なんと今回はハワイ公演(10月17日 ハワイ大学マノア校 オービス音楽堂)まで実現。石垣出身の3人組エンタメバンド、きいやま商店(国内公演のみ)をゲストに、沖縄の方言や歴史、文化、風習を取り入れた内容で、沖縄の魅力、笑いを国内だけでなく、世界へも発信する。
出演はガレッジセール(ゴリ・川田広樹)の2人ほか、普久原明、福田加奈子、宮川たま子、ありんくりん・クリス、ありんくりん・ひがりゅうた、田仲メリアン、宝眞榮日也美、仲地智子の10名。公演を控えたゴリと宮川たま子の2人を直撃して見所などを聞いて来た。
—— そもそもこの「おきなわ新喜劇」ってどういうものなんでしょう?
ゴリ:約6年前に立ち上げた劇団なんです。「笑って学べる沖縄」をコンセプトに沖縄の要素と新喜劇の要素を合わせたようなものを沖縄に定着させることができないかと思ってはじめました。吉本新喜劇に何度かゲストで出させてもらった時に舞台の上から、子供からおじいちゃんおばあちゃんまでが波打つように客席で笑っているのを見て、なんて幅広い層を幸せにするお笑いなんだろうって衝撃を受けて、それを自分たちの出身地でもある沖縄に持ってこれないかなって考えたのがきっかけなんです。
—— ただ新喜劇をもっていくだけでなくて沖縄の要素も強く入れようと思ったのはなぜですか?
ゴリ:沖縄って日本の中でも独特の魅力を持った場所なんです。沖縄に来たら綺麗な海を見る、おいしいものを食べるで終わるんじゃなくて、その独特の歴史や文化に関する知識を、笑いを通じて持って帰ってもらえたらいいなと思ったんです。沖縄は夜のエンターテ
インメントが少ないとも言われているんで、観光のひとつになるようなものを作りたいなって。小さな劇場を借りて毎週日曜、3回の公演をやっているんですけど、いずれはもっと大きな場所でやれるようになりたいって夢を持っています。
—— 地元・沖縄とこんなふうに向かい合っていこうと思いはじめたのはいつ頃からなんですか?
ゴリ:以前は全然だったんです。だって、どちらかというと、沖縄にいるより東京に出たいと思っている側の人間でしたからね。で、東京に出ると沖縄の魅力がよくわかったんです。出ないとわからないのかもしれないですね。自分がなぜ芸能界でこうしてやれているのかっていうのも結局沖縄出身だからっていうのが大きいって気付いて。やっぱり珍しいねって言われたりして、番組でも沖縄ロケの仕事をもらったりしたんです。沖縄に助けられている部分が大きかったんです。そういう意味でも沖縄に恩返ししたいなって。沖縄の観光になるようになるものを作れたら恩返しになるかなって。
—— この先もずっとこの「おきなわ新喜劇」に取り組んでいこうと。
ゴリ:実は軌道に乗ればボクは抜けるつもりでいるんです(笑)もっと大きくなってラスベガスのショーのように沖縄の観光を支える存在にしたいなって。夢を見ながら土台を作っている最中です。だから、その土台作りのために毎週日曜日、沖縄に通っています。
—— 毎週飛行機に乗って沖縄に通うのは大変じゃないですか?
ゴリ:ハードだったのか川田(広樹)は血管詰まっちゃいましたね(笑)
—— 川田さんもゴリさんと同じようなスタンスでこの「おきなわ新喜劇」に取り組まれているんですか?
ゴリ:川田は最終的には沖縄に帰りたい人間なんです。川田にとってみれば、これがずっと続けられるようなら沖縄でずっとやっていけるわけだから、嬉しいプロジェクトであると思いますよ。川田が沖縄に住むようになったら、沖縄に通うんじゃなくて、逆に東京に来てもらわないといけない。ガレッジセールはガレッジセールでずっと続いていくわけですから。川田は沖縄が好きでしょうがない人間なんです。やりがいを感じていると思いますよ。
—— 今回のツアーではハワイ公演があって、タイトルもアロハが入っています。ハワイと沖縄はどういう関係があるんですか?
ゴリ:沖縄は外へ移民していった人がすごく多い地域でもあるんです。ブラジルやアメリカ、それに加えてハワイへ移民した人たちもすごく多くて、ハワイには沖縄県人会というのもしっかりあるくらい。そういう部分でいつか世界中の沖縄県人会のところに直接行って「おきなわ新喜劇」を見せたいということも考えて来て、今回それがまずハワイで実現したんです。楽しみです。
—— 「おきなわ新喜劇」の出演者の中で推したいメンバーはいますか?
ゴリ:吉本新喜劇でいう間寛平師匠や池乃めだか師匠のような存在を「おきなわ新喜劇」でも作っていきたいんですけど、まだ劇団の歴史も浅いので、メンバーも芸歴一年目の子とかを手取り足取り教えながら育てている感じなんです。その中でもありんくりんの二人はぜひ注目してください。
—— ありんくりんは沖縄の方言をモチーフにしたネタを以前からやっていますね。
ゴリ:ありんくりんの2人も一年目のときは何にもできないような子たちだったんです。でも、この5年間「おきなわ新喜劇」以外にもよしもと沖縄花月で365日舞台に立ち続けたりして、腕も度胸もついてきました。りゅうたのほうは面白いし、三線はうまいわ、沖縄民謡も歌えるんです。沖縄の方言もできる。実は僕は逆に沖縄の方言は喋れないんです。難し過ぎて(笑)なのに純粋な方言を彼は喋れて、沖縄らしい表現ができるんです。クリスはクリスでハーフなので、米兵とかが出てくる役で活躍しています。「おきなわ新喜劇」を引っ張っていく存在になるんじゃないかと期待しているんです。
—— 国内の公演ではゲストにきいやま商店が参加しますね。
ゴリ:沖縄ゆかりのゲストを毎回呼んでいるんですけど、今回は東京や大阪でも人気が出ているきいやま商店さんです。彼らは非常にコントが好きなんです。ギャグをたくさん詰め込んでくる珍しいアーティストで面白いですよ。彼らと劇中でもコントをしながら、彼らの生歌も聴けます。沖縄の音楽が聴けるのも「おきなわ新喜劇」の特徴のひとつなんです。歌い手さんがいない場合でも劇団の誰かが沖縄の民謡を歌ったりするんです。
—— 宮川さんはこの劇団に参加されてどんなところに魅力を感じていますか?
宮川:沖縄の方言がわかりやすく伝えられるので、みんなが方言を持ち帰ってまたそれぞれで使ってくれるのが嬉しいなって。ギャグもみんなが真似して広まっていったら嬉しいなって思っています。
—— ガレッジセールの二人は宮川さんから見てどんな存在ですか?
宮川:お二人と一緒にやれるのがあたしにとっては夢のようです。二人とも真面目で笑うところは笑うし、やるところはきっちり決める。あたしたちの意見もちゃんと聞きながらそれを取り入れてくれる。すごくやりやすいので、思いっきり弾けて、あたし自身もこれを機にガレッジセールのように売れたいなって思っています(笑)
ゴリ:たま子に関して言えば、恐ろしいくらい不器用なんですけど、その不器用さが前回のツアーでは大爆笑でした。演技が下手過ぎてお客さんが笑うんです。一人で感情を爆発させる演技とかあったんですけど、下手過ぎてお客さんが笑う。そういう部分も注目してください。たま子は不器用なのが個性なんです。きっと好きになると思います。
—— メンバーも個性豊かな方ばかりで公演楽しみですね。
ゴリ:出演者は東京、大阪の人からすると知られていない人が多いと思いますが、生で見ると、みんな可愛らしい人たちばかり。沖縄人ってみんな可愛らしいんです。そういう意味でみなさんが出演している役者たちを一人でも好きになってくれたら嬉しいなと思います。一人一人個性があるのでぜひ好きになってもらいたい。たま子も含めて可愛がってください。沖縄の魅力に触れたいならぜひ「おきなわ新喜劇」に!
(取材・文:名鹿祥史)