陣営は文字通り、眠れない夜が続いていることだろう。2008年の最優秀短距離馬スリープレスナイトが窮地に追い込まれている。
昨年10月にGI・スプリンターズSを制したものの、好事魔多しとはまさにこのこと。その後に予定していた香港遠征は放馬による外傷で中止となった。さらに、不運が続く。昨年末には放牧先のグリーンウッドで、ジンマシンを発症。2度にも及ぶアクシデントに見舞われた。
そのために青写真を描いていたドバイ遠征はもちろん、今年初戦を予定していたシルクロードSの出走も断念することになった。しかも、その影響はこの高松宮記念まで尾を引いている。
「相変わらず攻め馬はよく動いている。体調面で不安があるなら、1週前の追い切りであれだけの時計(栗東坂路800メートル50秒3)は出ない。ただし、ブランクと病気がどうか。そのあたりは心配だね」
橋口調教師もぶっつけでの本番出走に一抹の不安をのぞかせる。
これまで休養明けは(5)(1)着と決して悪くない。しかし、今回はこれまでと違って順調さを欠いた。それだけに指揮官はいつも以上に慎重だ。
もちろん、王者としての誇りもある。そして、いまだ連対を外していない1200メートル戦への絶対的な自信。トレーナはどんなに逆風が吹いていようとも、愛馬の底力を信じて疑わない。
「ダートを含めて千二は10戦9勝。この実績はダテじゃない。多少の不安があっても、この距離なら何とかしてくれるだろう」
昨年6月のCBC賞から本格的に芝へと路線変更し、わずか3戦で頂点を極めた絶対的なスプリント能力がある。今回こそ、その力を見せる瞬間がやってきた。
「確かに不安な面はある。でも、僕自身はこの馬の力を信じて乗るだけです」
鞍上の上村騎手にも迷いはない。人馬ともに死力を振り絞って決戦に挑む。