監督/綾部真弥
出演/渋川清彦、大西信満、桜井ユキ、山下真司、佐藤二朗ほか
たまにはエロス“皆無”な作品もオツなもの。代わりに目玉は“柴犬”というのは、意外や意外、オヤジ泣かせ。ご多分に漏れず、ボクも犬には無条件に目を細めるタイプで、柴は特にたまらない。朝のワイドショーの『きょうのわんこ』で、柴犬が出てくるだけで幸せな気分になれる、と告白しておこう。そんなタイプのオヤジたちが、柴連れて公園でヒマこいてダベるだけのこの作品が受けるのもなるほど。都心のド真ん中、港区の芝公園じゃなくて“柴公園”という題名もイイね。池松壮亮と菅田将暉が川辺でダベるだけなのに面白かった映画『セトウツミ』(16年)のバリエーション。濃厚な味付けの人間ドラマに飽きた人への“お茶漬けサラサラ映画”か。箸休めにはもちろん“シバ”漬け!
ある町の公園、柴犬を連れてやってくる3人のおっさん、あたるパパ(渋川清彦)、じっちゃんパパ(大西信満)、さちこパパ(ドロンズ石本)は、とめどない無駄話を日々繰り広げていた。そんな中、3人の中で唯一独身のあたるパパに恋の予感が? どうやらお相手は真っ白な柴犬ポチを連れたポチママ(桜井ユキ)のようだが…。
かの『おっさんずラブ』を筆頭に、最近はおっさんドラマが花盛り。この『柴公園』もテレビドラマが発祥で、今回が堂々の映画版…(ちなみに『おっさんずラブ』も映画化する)といってもテレビ版と比べてさほどスケールアップしたわけではなく、意匠を凝らしたわけでもなく、そのユル〜イ作りは不変であった。
このAMGエンタテインメントという会社は“動物シリーズ”で名を轟かせていて、過去、カンニング竹山主演の『ねこタクシー』は、すごくペーソスがあって面白かったけど、玉石混交ではある。今回は玉と石の中間ってところか。多分作り手の狙いもそのへんだろう。この映画は愛くるしい柴犬大量出演! おっさんとコラボ! という、ただそれだけで成立するのだから。
寺田農演じるお堅い文学教授の父親と、少々拗ねた感じのあたるパパとの噛み合わないやり取りなどの会話劇がこの映画の真骨頂で、あたるパパに降って湧いたような恋バナのその後は、個人的にはあまり重要ではなかった。そこにヘンなドラマ性が出るととたんに面白さが損なわれる気がするからだ。映画もさすがにそのへんは心得ていて、ドラマチックになり過ぎないようにちゃんと抑制している。
さて、あの公園の行く末を案じつつ、たまにはエロスから遠く離れて、柴犬たちと戯れ、おっさんたちのつぶやきを聴こう!
《映画評論家・秋本鉄次》