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続・JAL社員Y君の憂い

 会社更生法適用後、この4月から、ボーナスなし、給料も5%ダウンということであるが、国民の血税である公的資金注入後も、この期に及んで組合と話し合いや、有能な社員の流出を防ぐために報奨金まで出すと考え始めている、など相も変わらず悠長なことをしている勘違い企業のJALである。

 JALグループで保安関係の仕事をしているY君は、昨年のボーナスが0円になったのはまだ我慢のうちだが、休日出張の際も電車賃しか出なくなった会社のあまりの不甲斐なさに一時は早期退職を願っていた。1月中旬までは。しかし、大きな事件が起こった。大学時代から付き合っていたガールフレンドが妊娠してしまったのだ。いつ漏れたのが着床してしまったのか、そんなことは考えても空しいだけである。とにかく、Y君の置かれた状況は激動した。とりあえず、殴られるのを覚悟で、結婚の承諾をもらいに向こうの両親に会いに行った。意外にもスキンヘッドの親父さんは、その厳つい顔の割に優しかった。しかし、結婚には条件を突き付けられた。今の仕事を辞めるな、ということだ。そう言われても、こればかりは自分では決められない。グループ社員全体の3割の人間が解雇されることは必至だ。自分は辞めたくなくても、肩を叩かれたらお終いである。しかし仕事仲間から聞いた話では、妻子がある場合はクビ回避の陳情も出来得るらしい。そういうわけで、まず、Y君は婚姻届を出すことにした。そして、現在住んでいる実家を出て、勤務地の空港から少し遠くなったが、彼女の実家に住ませてもらうことに決めた。今後どうなるか判らない自分の進退に暗澹しつつも、学校事務の仕事をしている彼女はあと6カ月働くことは可能であると考えた。しかも、彼女の実家に住むことでお産の面倒は義母に頼めるし、彼女自身も産休が終われば、また職場復帰できそうである。そしてY君は、明日から会社の上司に是が非でも会社に残れるように必死のアピールを始めようと思っている。

 Y君の会社の中はすっかり活気がなくなった。いよいよ今週くらいからグループ内で解雇要員が決まるようだ。学閥で優遇されるなどという話もある。これだけの赤字だったのに高給取りで、倒産すると思ったら国から支援してもらうなんて、他の一般企業の状況と比べたらどれだけ優遇されていることは良く分かっている。しかし、知り合いのJALパイロットから聞いたのには、少し同情するような話もあるようだ。ご存知の通り、退職者の年金カットは一応の合意を得たのだが、高給取りのパイロットたちは、JALの株券を購入することを強制ではないといえ、会社からかなり威圧的に勧められていたらしい。そしてその株券、先週の最終価格が1円である。退職金は削られるわ、積み立てのつもりで買った株券は紙屑になるわ、でリタイア後の生活設計を読み違えたJAL社員もいるということを、Y君はそれに比べたらよっぽど自分はツイていると思うようにしている。しかしながら、実際のところこれからの毎日が、針のむしろに座る心境のY君である。

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