スプリント戦で逃げ切るには2F目に最速ラップを刻んで後続を突き放すこと。2000年のダイタクヤマトは2F目に10秒5、2004年のカルストンライトは10秒6。そして、今年のアストンマーチャンはそれらを上回る10秒3を計時した。その抜群の二の脚で、2F目で早くも勝負を決めた。さらに、3F目も10秒8というハイラップを刻めば、どんな快速自慢でも絡むのは無理というもの。鞍上の中舘騎手も、2F目で勝利をほぼ確信したようだ。
「思いのほかスタートが決まって、もうしてやったり。瞬発力勝負になる馬場ではないと思ったので、直線でセーフティーリードがあればもう大丈夫だと」
不良馬場も味方した。思えばダイタクヤマトが逃げ切った年は稍重、カルストンライトオが先頭ゴールインした時は今日と同じ泥んこ馬場だった。抜群の二の脚に、不良馬場の恩恵が加われば、瞬発力勝負を望むスズカフェニックス、ペールギュントに成す術はない。
こうなれば近10年で外枠馬が7勝うんぬんのデータは意味をなさない。
「装鞍所でこの馬場だったら内外は関係ないと先生と話していた。とにかく馬に落ち着きがあったから」
最後に加えるならば、鞍上の中舘も“スタートの天才”だった。主役不在のスプリント界に名コンビが誕生した。