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日本球界は大恐慌時代を乗り越えられるのか? 我先にと身売りの準備に走る球団の数々(上)

 身売りの準備を密かに進める球団。テレビ局からオールスター、日本シリーズの放映権料までダンピングされ、財政破綻でお手上げ状態の日本プロ野球組織(NPB)。現状認識のない、ノーテンキな労組・日本プロ野球選手会。アマ球界の逸材にまで触手を伸ばすメジャー球団の日本市場拡大戦略の前に、大リーグ組織(MLB)のマイナー化どころか、独立リーグ化の危機に立たされる日本プロ野球界。スポーツ紙や週刊誌ではわからない、球界平成大恐慌のにわかには信じがたい実態をすべて露わにする。

 今、プロ野球協約に定められている「球界参入の際の預かり保証金25億円」撤廃へ、ソフトバンクと楽天が動き出し、球界は騒然としている。「ついにソフトバンクと楽天は球団身売りの準備に入ったか」と。それも無理はない。預かり保証金25億円というのは、球界に新規参入、球団買収をした新球団がすぐに身売りをするのを防ぐための条項だからだ。 10年以上、球団を持っていれば、この預かり保証金25億円は返ってくるが、それ以前に身売りすれば返却されない。
 その制度を廃止しろということは、新たに球界参入する門戸を広げろということだ。要は、球団を買いやすく、売りやすくすることになる。7月22日の12球団オーナー会議で、楽天・島田亨オーナー、ソフトバンク・笠井和彦オーナー代行が相次いで預かり保証金撤廃を提案したのだから、球界内部に衝撃が広がったのは当然だろう。「ソフトバンクや楽天といったIT企業は目先の利益追求がすべてだから、儲からないと思ったら簡単に球団身売りするだろう。既存の球団のようにメンツとか世間体など気にする企業ではない」というのが球界関係者の一致した見方だったからだ。しかも、どちらも本社の業績悪化がささやかれている。
 「ソフトバンクはやたらテレビCMなどにカネを使い、犬を主人公にしたCMは話題になっているが、実は借金まみれの自転車操業が実態だといわれている。ソフトバンクに球団身売りしたダイエーにそっくりな現状だと言えるだろう。拡大路線をひた走り、気がついたら身動きができなくなっている」。こう球界関係者が語り、球団身売り報道に神経をとがらせている現実をこう明かす。
 「一部でこの預かり保証金撤廃提言は球団身売りにつながる危機だと報道され、ソフトバンク球団幹部は顔色を変え、抗議している。『身売りなんて書かれたら、本社の株価に影響してくる』と。が、『根も葉もない報道ではなく、痛いところを突かれたから、怒っているのだろう』と球界内部では受け止められている」。
 楽天本社もTBSの株を買い占め、買収をもくろんだが、返り討ちにあい、大きなダメージを負っている。巨人・渡辺恒雄球団会長が指摘していた「楽天がTBSを買収すれば、楽天球団とTBSが親会社の横浜と二つの球団を保有することになる。野球協約で禁止されていることで許されない」という、球団二重保有問題は解消されているが、今度は楽天球団の経営そのものに疑問符が付けられるようになっている。

 ソフトバンク、楽天とも、このストーブリーグでも球団身売り情報を裏付けるような動きをしている。ソフトバンクは、マリナーズを退団した城島健司を復帰させることができず、阪神にさらわれている。「城島の恩師の王さんが球団会長でいて、実際に会っているのになぜソフトバンクに行かないのか」という疑問から、一部週刊誌では「恩師を裏切り、大金に目がくらんだ城島」という城島バッシングが起こったが、真相は違う。バリバリのメジャーリーガー・城島を呼び戻すお金がなかったら、復帰させられなかったのだ。
 王球団会長が城島と会って復帰要請したのも、阪神が南球団社長、真弓監督が城島と会談、4年総額20億円という条件提示をした後だが、これもワケありだ。王氏に近い球界OBがズバリ楽屋裏を明かす。「球団が『松中との年俸のバランスもあるし、田上がレギュラー捕手になったし』と二の足を踏んだことに激怒した王さんが城島と会うことで、球団側が獲得に動かざるを得ないようにしたんだよ。が、球団側にしたら、王さんとファンに対し、一応城島獲得に動いたというアリバイ作りだけ。だから動きはスローモーで、条件提示もしないうちに、阪神入りが決まっている。その結果、何も知らない週刊誌が『恩師の王さんと復帰を願う博多のファンを裏切った城島』などと書けば、ソフトバンク球団の思うつぼだろう」。
(つづく)

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