デビューは皐月賞も終わった4月26日の福島。未勝利を勝ち上がるのに3戦を要した。最初は決して目立つ存在ではなかったオウケンブルースリが、いよいよ主役として淀のクラシックの舞台に立つ。
「1度使って調整は楽になっているし、いい状態で臨めそうだね」と音無調教師は静かにうなずいた。もうあわてる必要はない。この余裕がデキの良さを物語っている。
1週前の追い切りは栗東坂路で800メートル56秒2。平凡な時計にも同師は微動だにしない。
「馬場状態がかなり悪かったし、時計はそんなに問題じゃない。しっかり併せ馬をすることが目的で、それ自体はうまくいったから」。19日にも坂路で800メートル58秒7、ラスト1F14秒9をマークしており、抜かりなく仕上がっている。
前走の神戸新聞杯は3着。しかし、内容は強かった。道中は最後方。早めに動いた勝ち馬ディープスカイと、4コーナーではかなりの差が開いていた。「とても届きそうにない」と同師に惨敗まで覚悟させたが、そこから猛然と追い上げた。
差し届かなかった前の2頭…ディープスカイは天皇賞・秋に進み、2着のブラックシェルは故障でリタイア。目の上のタンコブがいなくなった今、思う存分、その決め手を生かせるはずだ。
どの馬にとっても未知の領域となる3000メートル。「コーナーが6つあるし、枠順などいろんな要素を味方につけなくてはならない」と音無師。オウケン自身にも折り合いという大きな課題がある。
だが、そのあたりを踏まえたレースが神戸新聞杯だった。内田博幸騎手はあえて最後方で折り合いに専念。そこからどれだけ脚を使えるか試した感が強い。
「折り合いさえつけば距離は心配していない。自分のレースさえできれば」と同師は言った。2周目の3コーナー、坂の下りをリズム良く乗り切ればあとはフルスロットル。無尽蔵のスタミナを持つウチパクが栄光のゴールを目指して追いまくる。
【最終追いVTR】坂路で併せ馬。同じく菊花賞出走のミッキーチアフルに1馬身遅れとなったが、相手の鞍上は体重の軽い生野騎手。この馬自身も仕掛けてからの反応は上々。ゴール前は真っすぐに伸びて時計以上に切れのある動きを見せた。