事務所に所属せず、作詞・作曲から衣装、ライブの構成まで、すべてセルフプロデュースで行う“生うどん”の2人。それだけでも相当個性的なのに、「歌より長い寸劇」「容赦ない客いじり」など、彼女たちの破天荒なパフォーマンスは、アイドルファンの間ではすでに話題になっていた。そんななかで、大メジャー番組『水曜日のダウンタウン』への出演。大舞台に少しはおとなしくするかと思いきや、訪ねてきたバイきんぐの小峠英二にウザ絡みするなど、期待通りの自由奔放ぶり。コアなアイドルファンだけでなく、一般層にまで一気にその名を知らしめた。
動画投稿アプリ「MixChannel」から、この夏、一気にメジャーシーンへと躍り出たのは「まこみな」の2人。彼女たちも、一気に知名度を上げたのはテレビ出演がきっかけだ。福島県郡山市在住の現役高校生だった昨年夏、TBS系『ニンゲン観察バラエティ モニタリング』に出演。すでにネット上ではブームとなっていた「双子ダンス」で一躍有名に。今年7月6日にリリースされた配信シングルに続き、10月12日にはいよいよ初のCDシングルも発売される。
両ユニットに代表されるように、近頃、「2人組」のアイドルが注目を集めている。篠原ともえとのユニット「シノバニ」も誕生した「バニラビーンズ」、バンドアイドルグループを経て現在はデュオスタイルで活動している「WHY@DOLL(ホワイドール)」、バブル時代を思わせる衣装に身を包み「地下セクシーアイドル」を自称する「ベッド・イン」。有名どころから地下系まで、ざっと数えただけでも数十組の2人組アイドルが活動している。元アイドリング!!!のYURICA(橘ゆりか)とLUKA(倉田瑠夏)が結成した「Booing!!!」も、7月19日に1stインディーズシングル『CROSSOVER』をリリースしたばかりだ。
古くはピンク・レディー、ザ・リリーズ、リンリン・ランランなど、「2人組」というアイドルのスタイルは、決して珍しいものではなかった。1960〜70年代、アイドルは「ソロ」が主流であり、多くてもキャンディーズなどの3人組ぐらいまで。状況を一変させたのは、言わずもがなおニャン子クラブの登場だ。
85年に『セーラー服を脱がさないで』でデビュー、一大旋風を巻き起こしたおニャン子クラブは、「大人数グループ」「卒業システム」といった新たなスタイルを生み出した。その後、乙女塾や東京パフォーマンスドール、桜っ子クラブさくら組など、多くの「グループアイドル」が誕生するが、2人や3人のユニットが下火だったわけではない。おニャン子クラブからも、うしろゆびさされ組が数多くのヒットを放ったし、「おニャン子以後」に大ブレイクを果たしたWinkも2人組だった。
時代は移り、「大人数」「卒業」といった手法は、モーニング娘。やAKB48に受け継がれ、今や「グループ」こそがアイドルの王道スタイルとも言える。かつてハロプロでは、加護亜依と辻希美のW(ダブルユー)や、松浦亜弥と藤本美貴によるスペシャルユニットGAM(ギャム)が活動していた。現在では、同じアップフロント所属として「Bitter&Sweet」はあるものの、ハロプロに2人組は存在しない。AKB48では、2人組の派生ユニットは一度も誕生していない。
今、2人組のアイドルは、ビジネスとして成立しないのだろうか? 生うどんやまこみなのように、大きな話題を生むユニットは存在するのだから、2人組ならではのメリットもあるはずだ。
2人組アイドルならではの強みとして、「身軽」というのがひとつ挙げられる。セルフプロデュースでライブ活動をする生うどん、動画を投稿して注目を集めたまこみな。どちらも、2人組だからこそフットワークよく展開することができたのだろう。
当然、身軽さには「運営費が安く済む」というのも含まれる。大人数のグループとなれば、メンバーのギャラはもちろんのこと、ライブを行えば移動費や食費などだけでも大きな金額となる。また、インストアイベントや小規模ライブハウスでの活動も、2人組ならではの身軽さは強みとなるはずだ。今、2人組のアイドルユニットが次々誕生しているのも、こうした身軽さから「容易にはじめられる」という理由もあるのだろう。
2人組ならば、個々の「キャラクター」も押し出しやすい。大人数のなかに埋もれさせることなく、それぞれの長所や個性を見てもらうことができるのは、ファンを獲得する上では非常に大きな利点だ。また、常に2人きりであるゆえ、メンバー間の「結びつき」もアピールしやすい。2人の関係性や親密さが伝われば、ファンは思い入れを抱きやすくなる。
その結びつきに綻びが生じれば、それは2人組ならではのデメリットに転じる。2人しかいないのだから、どちらかがアイドル活動に見切りをつけたり、あるいは2人の関係に不和が生まれたりすれば、それは即「解散」「活動終了」に繋がる。事実、2人組アイドルが次々誕生する一方で、活動を終えるユニットは多い。最近だけでも、解散はせずとも、どちらか1人が体調を崩しただけで、活動が成立しなくなる。大人数グループのように「○○は体調不良のため欠席させていただきます」では済まない。
個々のキャラクターを押し出しやすい反面、大人数グループのようにユーザー層の「多種多様な好み」には対応できなくなる。10人もいれば、どこかに自分の好みのメンバーを見つけられるものだが、2人では「どちらも…」ということも。これは、握手会やチェキ会などによる「複数枚購入」が当たり前となったアイドルビジネスにおいては、特に大きなデメリットとなる。効率の悪さなどを考えても、CDを複数枚買ってもらうという点においては、グループアイドルの利点はやはり大きい。
現在のアイドルビジネスの定番手法に負けず、「ソロや2人組は大成しない」といった定説を覆し、大ブレイクする2人組アイドルは出てくるだろうか?
【リアルライブ・コラム連載「アイドル超理論」第40回】