軽減税率とは、所得が低い人の負担を減らすために、10月1日以降も生活必需品の消費税率を現行の8%に据え置く制度のこと。主な対象は「新聞」と「食料品」で、特に外食産業は同じ商品を買っても“どこで食べるのか”によって税率が変わってくる。
「外食は贅沢扱いで10%、持ち帰ると生活必需品扱いで8%のままです。たとえばハンバーガーを店内で食べれば10%、持ち帰れば8%になるわけです」(経済ジャーナリスト)
このため、外食各社は価格設定に頭を悩ませていた。
「ファストフードの代表格であるマクドナルドやケンタッキーフライドチキン、牛丼チェーンのすき家などは店内飲食と持ち帰りを同一価格に設定。一方、モスバーガーや吉野家は店内飲食と持ち帰りで税込価格が別になります」(同)
税率が異なる外食チェーンでは、こんな事態も危惧しているという。
「イートインスペースでの飲食は税率10%になりますが、客が意図的に税率8%のテイクアウトで購入し、気が変わったフリをして店内で飲食する悪質なケースは防ぎようがない。店内で飲食をし始めた客に対して注意するとトラブルの元ですし、追加で2%を請求するわけにもいかない」(外食チェーン関係者)
軽減税率に加えて「キャッシュレス決済によるポイント還元」など、支払時の手続きも煩雑になる。軽減税率に対応したレジもメーカー在庫が完売し、10月1日までに納入が間に合わない店舗も続出している。
「メニュー表の変更やレジの対応、仕入れの見直しで今月はてんてこ舞いです」(飲食店オーナー)
今後は税率が8%に据え置かれるテイクアウトやデリバリー(出前)の利用拡大が見込まれるため、テイクアウトの予約サイトや、フードデリバリーサービス「Uber Eats(ウーバーイーツ)」と業務提携する飲食店も増えているが、しばらく混乱は続きそうだ。増税の痛みは暮らしに直結する。低所得者や高齢者など弱い立場に置かれた人ほど負担は重くのしかかる。