「日銀の総裁、副総裁は衆参両院の同意を得て内閣が任命します。法案であれば参院で否決されても衆院の再議決で可決できますが、日銀のトップ人事は対象外。竹中平蔵・前総務相の起用にはかねて民主党が反発しており、実現の可能性は限りなくゼロになったといっていいでしょう」(政治部デスク)
官邸が強力にプッシュしてきた本命が圏外に去ったことで、政治的思惑も絡み“ポスト福井”レースは一挙に波乱含みになってきた。
日銀には武藤敏郎氏、岩田一政氏の2人の副総裁がいる。しかし、それぞれにアキレス腱があるのだ。
「金融関係者には財務省事務次官OBである武藤副総裁の昇格が有力との観測があります。ところが4年前の副総裁就任時に民主党は“財務省と日銀プロパーがタスキがけでトップを支配する恐れがある”と反対した経緯があります。このため、“武藤総裁”誕生のハードルは高い。もう1人の岩田副総裁は日銀が2月に断行した利上げの際、9人の政策委員の中で唯一反対し、執行部の足並みの乱れを露呈した経歴を持つ人物。逆にいえば、それだけの論客といえるが、岩田副総裁は竹中前総務相に近いと言われています」(銀行関係者)
岩田氏は旧経済企画庁を経て母校の東大教授になった。6年前に民間枠として内閣府の政策統括官に抜擢され、当時の竹中経済財政相の下で小泉内閣が打ち出した「骨太の方針」の作成に深く関った。4年前に小泉内閣の任命で日銀副総裁に就いたのは「インフレ・ターゲットの導入を求める竹中さんの強力な後押しがあったから」(金融筋)といわれる。依然として小泉、竹中アレルギーが強い民主党が「岩田総裁」を推すとは思えない。
法律的には福井総裁の続投が可能だ。だが、村上ファンドへの資金拠出で大ミソをつけ、一時は任期半ばでの更迭が囁かれた以上、任期を終えてのリタイアが本音といわれる。実際、福井総裁は一部で囁かれる続投説を強く否定している。
となると“大物”4氏は揃いも揃って圏外に去り、次期総裁レースは有力候補者が不在のまま進むことになる。