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山口敏太郎の直言(11) 企業寿命三十年説〜馬鹿が馬鹿を引き上げる負のスパイラル

 俗に“企業の寿命は三十年である”と言われてきた。確かにどんなに優秀な創業者であっても、その感性や経営感覚もしだいに鈍ってくる。30代で創業したとしても三十年後は60代、なかなか時代の流れを読み取るのがしんどくなる。この場合、後継者を厳しく育ててないと、その企業は終焉に向かって少しづつ転落の坂道を降りていくことになる。

 ゆえに長く活動できる企業は優秀な経営職を絶えず育成し、常に適切な役職に引き上げていく人事システムが構築されている。だが、戦後から数えて、三十年周期のローテーションが二回繰り返された事もあってか、わが国の大部分の企業が”馬鹿経営職”を抱える結果となっている。大王製紙の阿呆ボン、オリンパスの経営職たちなど、社会的な問題を引き起こした経営者は枚挙に暇が無い。
 では、何故企業に“馬鹿経営職”という膿がたまるのか考えてみたい。それは、経営職という立場にいながら、己の部下を“個人の好き嫌い”や“自分へのへつらい度数”で評価する馬鹿者がいるからである。

 趣味や遊びにおける友人関係ではないのだ。仕事における人間の評価に、評価する側の個人的な感情が入ってはいけない。あくまでドラスティックに、企業という運動体を延命維持し、或いは拡大できる人材を的確に判断しなければならない。
 残念ながら、それが出来ない“馬鹿経営職”が運だけで上にあがってしまうことがある。となると癌細胞で一緒で企業の肉体をどんどん蝕んでいく。最もたちが悪いのは、この手の“馬鹿経営者”は、部下の中から自分と同程度の馬鹿を引き上げていく。つまり、馬鹿が馬鹿を引き上げる負のスパイラルが繰り返され、経営職における“馬鹿占拠率”があがっていき、企業風土は荒れていく。
 我々日本人は、他人を明確に評価しない。あの人のこの部分は良いが、この部分は問題であるなどと、はっきり言うことはない。逆に他人から、はっきりとした評価を言われた事もないし、稀に帰国子女などに客観的で的確な評価をされた場合、正論だと思いながらも戸惑ってしまう。

 つまり、我々日本人は、企業体という組織に成り代わって、部下たちを客観的に評価することは本質的に苦手なのだ。苦手ならば、簡単である。評価は第三者に実施させればよいのだ。人事査定を行うセクションは他社(事実そういうビジネスはある)にまかせればよい。人間を正当に評価することは、いまや技術なのだ。ならば、専門職に対応させ、十年ほど放置してみることだ。社内の“馬鹿経営職”が軒並み駆逐され、組織が蘇生するはずである。
 TPPに加盟するのは良いが、その前にわが国に巣食う“欧米では評価されるはずの無い馬鹿経営職たち”を一掃せねば、国際的な競争に勝てるわけがない。本当に世界と互角にやれる戦闘集団としたければ、馬鹿が馬鹿を引き上げる負のスパイラルを断ち切り、人材という“本当の宝”を的確に育成できる評価システムを構築すべきである。(山口敏太郎)

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