特に外食派は、ラーメンを好み、スーパーで買った惣菜を利用し過ぎる生活が続き、塩分適量ゾーンを軽くオーバーしている。
塩分は将来の高血圧や心臓病、癌などのリスクがあるため、“必要悪の調理品”として冷めた目で見られがちだが、一方で、人間が生きていく上で疎かにできない貴重なもの。とくにこの時期、熱中症対策には水分補給とともに、塩分摂取は欠かせない品だ。
今回は、扱いによっては二律背反になりかねない食塩と向き合い、減塩という大きな課題にどう取り組むか、病気のリスクを抑える“減塩策”を考えてみよう。
厚労省が掲げる国民一人当たりの食塩摂取目標は、成人男性で1日10グラム未満、女性で7.5グラム。男性の場合は小さじ2杯弱にとどめようというわけだが、これで1日3食分を賄えるのか、素人ながら懐疑的にならざるをえない。
生活習慣の改善運動に取り組んでいる管理栄養士・前田和美氏に、普段、何げなく食べている食品に、どれくらいの塩分が含まれているのか尋ねてみた。
「日本の料理は醤油、味噌、食塩などを使う食文化が色濃くあります。加えて近年は、ファストフード、スナック菓子なども多くなり、日本人の1日当たりの塩分の摂取量はおよそ12〜13グラム。欧米は5〜7グラム程度ですから、いかに摂取量が多いかわかると思います。できれば、その欧米レベルが理想的で、国も10グラム以内に抑えることを提言しているが、それができそうでできないのが、減塩対策の現状でもあります」
前田さんは、地元の東京・町田市内のスーパーを覗き、惣菜売り場の「めんたいこおにぎり」を実際に手に取って裏側に添付されたラベルを調べると、「ナトリウム630グラム」とあるものの、肝心の食塩含有量の記述がなかったという。
「鶏の照り焼きそぼろ弁当にしても、容器の底のシールにナトリウム1420グラムとあるが、塩分の表示はありませんでした」
と前田さん。それではと、表示のナトリウムを塩分に換算する方式で計算した。
その結果、食塩含有量は「めんたいこおにぎり」が1.6グラム、「鶏弁当」が3.6グラムだった。これに「カップみそ汁=2.7グラムを追加すると、計7.9グラム。国の基準値に合わせると、残り2食で約2グラムの食塩しか摂取できないことになる。
減塩の難しさは、これでもおわかり頂けると思う。となれば、生活習慣を変えることに尽きるが、どこから手を付ければいいのだろうか。
「長寿県の日本一になった長野県をはじめ、食の魅力があふれる新潟など、東北・北信越地方でも、県民の塩の摂り過ぎが長年の課題でした。それを行政とNPOなどが共同で減塩食などの研究に取り組んできました。新潟県も“1日1グラム減”を目標に『にいがた減塩ルネッサンス』を立ち上げるなど、減塩運動で一定の成果を上げています」
こう説明するのは、健康管理スペシャリストとして成人病予防活動をしている相原恒彦氏だ。
「この運動の基本は、味わいや栄養素、食べる量などのバランスを崩さずに、ちょっとずつ塩分を減らしていく、という感覚が大事です。急に薄味にしたものの満足感が得られず、味を戻したりしながら、つい食べ過ぎてしまうようであれば困る。食べる量を減らすのが現実的です」(同)