「男はつらいよ」誕生40周年プロジェクトチームを作り、全国で寅さんとわいわいやろうと多くのイベントを用意したのが映画の配給元、松竹。十三回忌の献花式など、すでにプロジェクトはスタート。
目玉のひとつが、「男はつらいよ」全48作の上映。8月9日から東京・築地の東劇で24作品が上映されるのを皮切りに、大阪で14作、9月上旬からは福岡でも上映が予定されている。
「まだすべての日程は出ていませんが、各地でゆかりの作品を中心に公開されます」(プロジェクトチーム)
フーテンの寅が20年ぶりに故郷の葛飾柴又にある、だんご店に戻ったところから始まるのが、1969年の第1作「男はつらいよ」。
それ以降、異母妹のさくらや近所の人々、そして旬の女優が演じたマドンナとドラマを繰り広げるシリーズは、95年の最終48作まで、約8000万人(松竹調べ)の観客を集めた。
「今回のプロジェクト上映は一斉スタートではないため、どのくらいの方が観にきてくれるかは、まだ予測がつきません」(同)
8月末には、特別篇の1作を加えた49作のDVDがHDリマスター版として、4回に分けて発売される。
また、CSでは特集が、インターネットでの配信も予定されている。この夏は寅さん、大活躍なのだ。
柴又での行事も、目白押しだ。
8月2日には、「葛飾柴又寅さん記念館」で、十三回忌の献花式。27日には笠智衆さんが住職を演じた帝釈天題経寺で、第1作の野外上映会がある。
松竹大船撮影所で使われた、だんご店「くるまや」のセットや映画の名シーンが見られる記念館には、今も年間20万人前後のファンが訪れる。
記念館の総括責任者、村上健二さん(61)は、「映画とともにある記念館。訪れた方は、自分なりの思い出を持って帰ってほしいですね」と話す。
また、「くるまや」は、京成電鉄金町線の柴又駅から帝釈天に続く参道が舞台。土産店や飲食店が並ぶ町は、映画で一躍、有名になった。地元商店街の「柴又神明会」の石川宏太会長(55)は、「この町の良さを、映画に教えてもらった」と感謝。東京都や葛飾区の支援を受け、映画が誕生した69年当時の再現に取り組んでいるところだ。
葛飾区で育ち、映画に先立つテレビシリーズのころから「寅さん」に親しんできたのが、フォークシンガーの、なぎら健壱さん(56)。
「優しさとか人情、節度ある男と女が出てくる恋愛など、日本人が失ったものを求めて人気が高まっていったのでしょう。今は、人情をはぐくむ町の形態はすっかり変わってしまった。(寅さん映画は)もはや願望に近い、日本人の原風景がありますね」と、懐かしそうに話してくれた。
渥美さんが生前、俳句を詠んでいたことは以外に知られていない。
6月末に発売された「風天(ふーてん)渥美清のうた」(大空出版、1800円)には、すでに公表されていた45句を含む全221句が収められている。
著者は、元毎日新聞出版局次長の森英介さん(68)。公表されていた句のほかにも渥美さんが詠んだ句があると聞き、約3年かけて母校の小学校などを調査して発掘、出版に漕ぎつけた。
<ゆうべの台風どこに居たちょうちょ>、<赤とんぼじっとしたまま明日どうする>など、作品の多くが定型にとらわれない自由律俳句。
「初版は1万部。松竹さんのイベントで紹介していただくなど話題になったこともあって、まだ増刷はしていませんが、そこそこ(部数は)いくと思っています」(大空出版担当者)
渥美さんの句は、寅さんと同じように全国区になるか。