search
とじる
トップ > その他 > 本好きオヤジの幸せ本棚(4)

本好きオヤジの幸せ本棚(4)

◎オヤジ人生にプラス1のこの1冊
『死の扉』(レオ・ブルース/小林晋=訳 創元推理文庫 966円)
醜悪だがユーモラスな人間模様を描く逸品

 翻訳小説を読んでいるときの喜び。それには幾つもの要素が混在しているけれど、外国に住んでいるような気分を安上がりに味わえる、というのはかなり楽しいものだ。とりわけ今よりもはるか以前に書かれていながら少しも古めかしくなく、あらゆる時代に通じる普遍性を持った良作に接すると、楽しさは倍加する。国のみならず、時間も心の中で移動できるからだ。
 本書はもともと1955年にイギリスで刊行されたミステリー小説だ。2年後に清水俊二による初邦訳版が出たが、やがて絶版になってしまった。長らくレオ・ブルースという作家は日本では知名度の低い存在だった。しかし1990年代に入ってから少しずつ邦訳作品が増え、この新訳版刊行が今年1月に実現した。
 イギリスの小さな町ニューミンスターで2つの殺人事件が起きる。小間物屋を営んでいた強欲な老婦人、彼女の安否を気にした巡回中の警官が立て続けに何らかの凶器で撲殺されたのだ。キャロラス・ディーンは歴史上の犯罪を研究してきた教師。にわかに身近で起きた事件にも興味を抱く。素人探偵だが情熱を込めて犯人捜しの調査を始める…。
 おびただしい数の容疑者に聞き込みを重ねていくディーン。そこから浮かび上がってくる醜悪ながらユーモラスな人間関係。イギリスの小さな町と生き生きとした人物描写が見事に溶け合った逸品だ。
(中辻理夫/文芸評論家)

◎気になる新刊
『新訳 成功の心理学』(デニス・ウェイトリー/ダイヤモンド社・1680円)

 「人生は、練習試合ではない。毎日が公式戦なのだ」
 多くの人は、残された時間が少なくなって初めて、この事実に気付く。しかし、たとえ人生の折り返し地点を超えても、手遅れな年齢などない。30年近く読み継がれる名著が待望の復刊!

◎ゆくりなき雑誌との出会いこそ幸せなり

 5月22日に開業する東京スカイツリー。すでに書店には数多くのガイド本が並んでいる。その中から『ぴあ』が刊行した『東京スカイツリータウン&新・下町散策』(780円)を紹介しよう。
 スカイツリー内部の全貌よりも周辺のタウン情報に誌面を割いているところが特徴。東京の新名所の誕生によって活気づく街の雰囲気が伝わってくる。
 グルメ、下町の神社仏閣、博物館などが紹介されているが、グルメといっても女子向けの情報だけではない。煮込み、天丼、焼き鳥、ホルモン焼き、鍋、餃子…気取らずガッツリと食えるオトコ飯もふんだんに盛り込まれており、まさに下町ならでは。
 スカイツリーの立地上、お膝元となる街は浅草、両国、錦糸町など、オヤジでも十分に溶け込める場所である。これを機に出向いてみるのも一興だろう。
 開業当初は混雑が見込まれるが、今のうちに購入しておき、客足が減った時に雑誌を手に散策…という方法がベストかもしれない。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

※「ゆくりなき」…「思いがけない」の意

その他→

 

特集

関連ニュース

ピックアップ

新着ニュース→

もっと見る→

その他→

もっと見る→

注目タグ