天皇賞・秋を制し、古馬チャンピオンに輝いたダイワメジャーが、返す刀でマイル王者の座に挑む。
デビュー戦(2着)のパドックで緊張のあまり、寝転んで動かなくなってしまったのは、有名な話。「神経質で環境が変わるとすぐ下痢をした」(上原師)と言うほど、精神的にひ弱だった馬が皐月賞を勝ち、その後はノド鳴りで競走生命の危機に陥りながらも、古馬の頂点を極めた。「本当にえらい馬だと思う。でも、これでも、ようやく本物になってきたかなっていう感じなんだ」と師は発展途上を強調する。
前走後はジャパンC参戦も視野に入れていた。「天皇賞の内容から、あと2Fの延長はこなしてくれそうだし、充実しているときに強い馬にぶつけてみたいという気持ちはあった。中3週のローテーションもいいから」(上原師)。結局、距離適性の高いマイルCSに向かうことになったが、「もともと秋に復帰したときから、最大目標にしていたレースだから、中2週でも何の問題もない」と師。「これから、まだまだ良くなる馬だしね」と来年のJC挑戦に含みを持たせた。
もちろん、中間は順調そのもの。激走の後だが、疲れはなく、連日、元気いっぱいの動きを見せている。「とにかく元気が良すぎて…。だいぶ大人になってきたけど、まだ風の強い日などは気を許せない。天皇賞馬が落ち葉1枚に驚いていては困るんだけどね。大型馬でパワーがあるから、毎日、3人、4人がかりだよ」と師は笑顔で話す。
昨年は直線で早めに先頭に立ち、そのまま押し切るかに見えたゴール寸前、ハットトリックの大外強襲にあってハナ差2着と涙をのんだ。「悔しいけど、よく粘った」と師。3着ラインクラフトには1馬身差をつけており、スピード上位を証明してみせた。
そして、今年は大きな援軍を得た。「乗り役さんが手の内に入れてくれているから」と師が全幅の信頼を置く安藤勝騎手が今回も手綱を取る。毎日王冠、天皇賞・秋と完ぺきな騎乗で勝利に導いた同騎手は「切れ味はないが、平均的な脚を長く使える馬。瞬発力勝負にならなければチャンス。そのためには自分から動いていける外めの枠がいい」とGI連覇にシミュレーションもばっちりだ。
「当日輸送だと減る傾向にあるが、関西は前日に運んで1日置いておくから、ふっくらした馬体で出せる。叩き3戦目で状態もベストでいけそうだし、間違いなく去年より力をつけているからね」と力強く締めた師。その顔は自信にあふれていた。