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創作実話を紡ぐ人々(1)

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艦これは、プラモデルだけではなくフィギュアやキーホルダーなどの関連グッズ販売

 最近のネット流行語に「創作実話」というものがある。これは読んで字のごとく、あたかもの実話のように創作されたエピソードで、代表的なものとしては「艦これにハマった元軍人」や「マックの女子高生」などがある。創作実話は基本的に「ほっこり系」のじんわり感動させる話が好まれるのだが、なかには「きさらぎ駅」ような怪奇や超常現象テーマのものもあり、都市伝説のバリエーションを豊かにしている。

 ただ、研究者にとっては創作実話が雑音となることもしばしばで、時には実話として受け止められ、研究を混乱させたことも少なくなかったとされる。そのため、創作実話の一部には「わざと間違った情報を混入させ」て、他の研究者が混乱しないようにそれとなくサインを送ることもあった。これは、著作権侵害を防ぐためにわざと存在しない町や通りを記入する「コピーライトトラップ」の変形とも言えるが、それなりに上手く機能していたようだ。

 ところが、そういった創作実話が版を重ねたり翻訳された際に、訳者や編集者が「間違いを校正」してしまうことがあり、いつしか「実話」として流通してしまうこともある。あたかも、地図上にのみ町が存在していた場所に家が建ち、やがて本当の町へ発展してしまうようなことが、創作実話においても発生していたのだ。

 有名なところとしては、艦これをきっかけに注目を浴びた創作実話「悲運の軍艦シャルンホルスト」がある。

 ネットでは「呪われた戦艦」などとして、シャルンホルストが以下の様なトラブルにみまわれ、戦時にも様々な怪現象が発生したと、まことしやかに伝えられている。

 シャルンホルストは建造中の大事故から始まってボイラーも爆発事故を頻発、さらに艦長予定者の急死、進水式で名付け親となるはずだった少女が自殺などなど。そして、最後は英戦艦が放った一発の砲弾で轟沈し、わずかな生存者も救助直後の事故で全員死亡と、まさに誕生から戦没まで不幸の連続であった。

 ところが、ネットでシャルンホルストの怪現象にまつわる情報が流通し始めた直後に、このような事故や怪事件は存在せず、全くの事実無根であることが判明したのである。それどころか、ドイツ海軍ではむしろ「幸運艦」とされており、実際にシャルンホルストと行動をともにした艦は全て生き延び、無事に作戦を終えて帰投していたのだ。

 では、ネットでまことしやかに伝えられた「軍艦シャルンホルストの悲運」とは、いったいなにが発信源だったのか?

(続く)

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