成人は通常、1日1回の排便がある。だが「便秘症」は、排便が数日に1回程度と少なく、間隔も不規則で便の水分含有量が低下している状態(硬便)をいう。
しかし、便秘といっても症状の現れ方や排便回数に個人差があり、専門家に言わせても明確な定義があるわけではない。便の量が少ない、硬くてうまく出せない、残便感があるなどの不快感が残る症状もある。
人にもよるが、3日便秘すると、お腹が重く感じ下剤などを飲む人がいる。しかし、長い人は1カ月、3週間という人もいる。その場合、便は黒っぽく、コロコロした便になることが多い。また、排便が2〜3日に1回で、それが硬くても柔らかくても何の苦痛を感じない時もある。
問題となるのは、排便困難や腹部膨満感などの症状がある便通異常(便秘症)が起きたとき。この症状は、単なる不快感では済まされず、重大な病気に繋がる心配があるのだ。
5年前、2008年4月13日付日経新聞に載った記事に注目が集まった。
「肝機能の低下に、一見関係のなさそうな便秘が拍車をかけることはあまり知られていない。国内に3000万人の患者がいるといわれる脂肪肝になると、肝硬変、肺がんなどに繋がる恐れもあり、便秘の悪影響を無視するわけにはいかない。肝臓をいたわりながら便秘も防ぐには、食事内容を含め生活習慣をどう改めればよいだろうか」
といった内容。
総合医療クリニックの院長で医学博士、久富茂樹医師も言う。
「便秘になると、本来は体外に排出されるアンモニアなどの有害物質(毒素)が肝臓に運ばれ、そこに滞留した場合は、胃や腸、肝臓に負担をかけることになります」
さらに、その際、何らかの要因で肝臓が弱っている場合について、こう説明する。
「便秘が続くと有害物質が血管を通って脳に達し、肝性脳症を起こす危険すらあります。もちろん便秘、“宿便”といわれる現象が続くと、肝臓障害の“終着駅”といわれる肝硬変のリスクが高まり、肝細胞の再生が不能となって肝臓も機能しなくなります。何日間も便が出ない時は、一人で悩まず、医療機関の診断を受けるべきです」